優しさは裏返せば自分かわいさ
田中圭が演じる京谷はそこそこエリートで、マンションも購入している。ガッキーのことが好きで、付き合って4年にもなるのに、なかなか煮え切らなかったのは、元カノの黒木華が自宅を占拠していたからだ。
別れ際に「仕事が見つかるまでは家にいていい」と優しさと度量の広さを見せたからこそ、居座られた。別れた女にいい顔したい、嫌われたくないっつう自分可愛さが見える。そこにまず激しくオンナアラートである。
なぜとっとと追い出さない? なぜ4年も許していた? その貴重な4年、ガッキーを待たせた罪は重いぞ。もっといえば、黒木に対しても中途半端な同情をするからこじれたわけで。そこに「男の器、盛り増し」を感じる。「寛大な自分」に酔ってただけでしょ。
まぁ、黒木もかなり図々しいうえに、すべてを人のせいにする性格の悪さは問題だ。が、ここまで意固地にさせてガッチガチに固めてしまったのは、田中圭の中途半端な優しさでもある。
優しくてお人好し、というのもここまでくると、罪深い。ただ単に、嫌われたくない、悪者になりたくないという「自分がかわいい」人にしか見えない。
実は細かい部分でも、厄介な男だった。
菊地凛子が履いていた強気モード系のヒールを見て、「ああいう靴、どこにアピールしてるんだろう?」と言う。松田龍平にお持ち帰りされたものの、ぞんざいな扱いを受けて怒る女性を見て、「女の子のほうも軽そうだったもんなー」と言う。
女性からすれば「はぁ?そこじゃないでしょ」という観点。なんか、たった一言なのに、致命的で絶望的。女は、男ウケするために服を選んでると思ってる? 男目線で軽そうに見えれば何をしてもいいとでも?
さらには、菊地に誘われるままにセックスしちゃうわ、スマホ忘れるわ、脇甘すぎるし。かといえば、ガッキーの苦悩を知っているからこそ、あえてヒールを演じた松田を殴りつけたりして。
妙なところで男気出すわりに、「(ガッキーを)幸せにしてくれるなら」と身を引くそぶりも見せる。責任逃れ。偽善。優しいフリして結局は自分のことが一番かわいい。
つまり、田中圭は「男のイヤなところとズルいところを凝縮した権化」である。そこそこエリートで、いい身体していて、外ヅラよくて優しくて、かなりの優良人材に見えるが、こういうのにほだされちゃいかんぞ、と奥歯でぐっと噛みしめた次第。