母と娘がうまくいかない理由

 大人になってからの母娘関係は大人同士なので難しい。うまくやるには、距離をおくことしかないだろう。老親のひとり暮らしが気になっても、別々に暮らすのが望ましい。

 母娘がうまくいかないのは、お互いの性格ではなく、“距離”だとわたしは痛感させられた。

 世の中で起きる事件を見ていると、家族間の殺傷事件が多いことに気づく。最近、高千穂で起きた一家5人と知人男性が殺されたすさまじい事件もそうだ。

 これはわたしの見解だが、家族間で悲惨な事件が起きるのは、家族の距離が近すぎるからではないかと。あまりに近くにいるからストレスが溜まり、ある日爆発する。

 経済的事情で親と同居している人もいるだろうが、なるべく早い時期に家を出たほうがいい。自分がこぶしをあげたくなる前に、家を出ることをおすすめする。貧乏でもいいじゃない。親から離れないと精神をやられる。何度も言うが、親が悪いのでもあなたが悪いのでもない。距離が悪いだけだ。親とは距離をとるのが仲良くいられるコツですよ。

 母と娘がいい関係でいられるのは、二人が強と弱の関係であるとき。小さいときは母は強者、子供は弱者でバランスがとれる。大人になった場合は、介護する人と介護される人でバランスがとれる。シーソーと同じで、同等が一番、安定が悪い。

 母親の介護を経験したことのある60代の女性が言うには、お互いが元気なときは口論が絶えなかったが、母親が弱くなり、彼女が介護をするようになったとき、二人は良い母娘関係になれたそうだ。

 わたしもなんだかんだ言って母と住んではいるものの、今は「やっぱりひとりが最高だ!」と思わずにいられない。

松原惇子=著『母の老い方観察記録』(海竜社)※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
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<プロフィール>
松原惇子(まつばら・じゅんこ)
1947年、埼玉県生まれ。昭和女子大学卒業後、ニューヨーク市立クイーンズカレッジ大学院にてカウンセリングで修士課程修了。39歳のとき『女が家を買うとき』(文藝春秋)で作家デビュー。3作目の『クロワッサン症候群』はベストセラーとなり流行語に。一貫して「女性ひとりの生き方」をテーマに執筆、講演活動を行っている。NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク代表理事。著書に『「ひとりの老後」はこわくない』(PHP文庫)、『老後ひとりぼっち』(SB新書)など多数。最新刊は『母の老い方観察記録』(海竜社)