──しかし、祭りの後はすぐ『クレジットカードの不正利用』が相次ぎ、「身に覚えのない請求」がくる人が続出する騒動になってしまいました。クレジットカード情報を登録する際、セキュリティコードの入力回数に制限が設定されていなかったことも大きな原因だったみたいです。
辛酸「3桁のコードなので、単純に1000回入力したら当たるということですよね。なかには数十万円もの被害にあったりという方もいました。クレジットカードを持っている全ての人が不正利用されている可能性があるというのは大ごとです。
テレビで“サービス終了ギリギリになってコンビニに駆け込む人”のニュースが放送されていましたが、その狂乱ぶりを冷たい目で見ていた人も不正利用される可能性があるという、運命共同体のような状況になっているのが不思議です。
また、Twitterなどでも話題になっていましたが、公式サイト内の【身に覚えのない請求がきたら】といった注意喚起のページには、《お客様の携帯電話やクレジットカードを知りえるご家族様や知人のかたの利用の可能性についてご確認ください》とありました(現在、該当箇所は削除)。
これは“当社を疑わず家族や知人を疑ってみてください”と言っているようなものですよね。ユーザーの人間関係にも影響を与えかねない表現はすごいです。家族や友人も信用できない時代がきたのかもしれません」
──今、日本でもキャッシュレス化が推し進められていますが、キャッシュレスについていかがお考えですか?
辛酸「個人的にはやはり現金のほうが金運的にありがたみがあるというか、お金のエネルギーを実感できそうです。そして何より、お財布からお金を出す感覚がないと、どんどん使ってしまいそうな気も。あの“ペイペイ♪”の音によって、軽い気持ちで支払ってしまう部分もあると思います。
はじめに登録したときに500円分のボーナスをもらえるのですが、これには“有効期限2年”との制約がありました。今回のデジカメを買ったときのキャッシュバックにも有効期限があったりするのでしょうか……。お金に寿命が生まれるといった感覚ですね」
──今回のPayPay騒動でネットも炎上してしまっています。
辛酸「キャンペーンのキャラクターに選ばれた宮川大輔さんも災難ですよね。『イッテQ!』の祭り企画でヤラセ疑惑が報道されたことでも度々名前が取り上げられたかと思えば、また巻き込まれて……。やはり本物の祭りじゃないと“開運効果”は得られないのかもしれません。
また、今回のクレジットカードの不正を見ると、炎上を安全なところから見ているつもりの人も、決して安全ではないということです。新しいサービスを楽しむくらいの感じで適度に使うのがいいのかもしれません。“タダ”や“キャッシュバック”のウラにはこのような罠や危険性がつきものと心得たほうがいいのかもしれないですね」
辛酸なめ子/漫画家・コラムニスト。
東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)『おしゃ修行』(双葉社)『魂活道場』(学研)、『ヌルラン』(太田出版)など。