“エッ、日本にも移民がやってくるの!?”と驚いた読者もいるかもしれないが、日本にはもう移民はいる。実際に146万人もの外国人がすでに働いているし、その家族も含めれば250万人以上の外国人が暮らしているのである。

 “移民”と聞くと、なにやら怖いイメージがつきまとうが、国連などの定義では“海外で1年以上、暮らす人”を移民と呼んでいる。つまり、アメリカで暮らしているイチローもYOSHIKIも移民。日本で暮らす外国人なら、英語の先生も、料理人も、コンビニで働く留学生も、農家で働く技能実習生もみんな等しく移民なのである。

 それなのに、安倍首相が「断じて移民政策はとりません!」などと繰り返すものだからややこしくなる。あれは自民党が「入国時点で永住権を持っている人」=「移民」としているので、自民党の移民の定義が国際基準からズレているだけの話だ。

「日本ではこれ以上、外国人は増えないかも」

 私たち日本人の生活は、すでに移民抜きには成り立たない。

 コンビニのおにぎりひとつをとってみても、売っているのはアルバイトの移民であり、工場でおにぎりを作っているのも移民、野菜やお米を育てているのも移民という構図になりつつある。

「でも、日本ではこれ以上外国人は増えないかもしれません」

 と言っていたのは、あるベトナム人留学生だ。彼は東京大学の大学院で経済学を学び、約5年間、都内のコンビニで働いていた。この春、大学院を出て、東京で就職する。将来は「日本とベトナムの懸け橋になりたい」と言う。そんな彼がこんなことを言っていた。

「東京オリンピックのあと、おそらく日本は不況になると思います。そのとき、不況の国で働きたいと思う外国人はいるでしょうか」

 2025年には、国民の3人に1人は65歳以上の高齢者となる計算。そんな現実が迫る国で、もし本当に不況になり、日本を避ける外国人が増えたらどうなるだろうか。

 積極的に外国人を受け入れている市長や担当者に話を聞くと、「日本のファンを作ることが急務だ」と言う。ファンを作るにはどうすれば?

 コンビニで働いている留学生に、どんなときがいちばんうれしいかと聞いたら、「ありがとうと言われたとき」や「日本語を褒められたとき」だという。

「ありがとう」「どこから来たの?」「今日も寒いね」「日本語、上手だねぇ」

 コンビニで交わすそんな何気ない言葉が、彼らの心にしみ込んで、日本を好きになってくれたら、少しは日本の将来に役立つに違いない。

(取材・文/芹澤健介)


《PROFILE》
芹澤健介 ◎ライター。1973年、沖縄県生まれ。著書に『コンビニ外国人』(新潮新書)など。外国人労働者の問題とともに、近年ではがんの最新治療法について取材を続ける