恋愛ドラマにかわって、平成中期に頭角を現し始めたのは、女性のお仕事ドラマ。メディアに詳しい上智大学の碓井広義教授が、そのハシリとして挙げたのはフジテレビの『ショムニ』('98年〜'13年)。
強い女性ヒロインの台頭
「会社は、どうしても男社会。そんな中で、女性たちが言いたいけど言えなかった本音を、ズバッと言ってくれた爽快感。かつ、主人公はキラキラとした特別な人ではなく、日常の中に冒険やドラマがあることも見せてくれた作品です」
さらに『ナースのお仕事』('96年〜'14年)、『ごくせん』('02年〜'09年)、『anego』('05年)、『ハケンの品格』('07年)などで新たな流れが生まれていった。
「ちょっと荒唐無稽で空気を読まないけど、強い。そんなヒロインがウケ始めました。ひとつの理想像とされ“強い女の人っていいよね”という空気ができたのが、平成中期じゃないでしょうか?」(テレビ批評家でライターの吉田潮さん)
背景には女性の社会進出がある。
「女性が四六時中、恋愛のことを考えているわけではないのに、そういうドラマが多かったのは、制作現場が男社会だったからでしょう」(碓井教授)
「働く女性が圧倒的に増え、ドラマの作り手にも女性が増えました。彼女たちによって、ワーキングウーマンに喜ばれるお仕事ドラマがエンターテイメントとして根づいていきました」(同志社女子大学メディア創造学科の影山貴彦教授)
'97年以降は共働き世帯が専業主婦世帯数を逆転。
「昼間にドラマを見る人がいなくなり、'09年にTBSの『愛の劇場』が終了しました。ドラマはコストがかかるので、見合わなくなったんですね。時代劇も同様です」(テレビドラマに詳しいライターの田幸和歌子さん)
長引く不況の影響に、'08年のリーマン・ショックが追い打ちをかけて、制作費はダウン。作り手も攻められず、小説やマンガ原作のドラマが急増していく。
「企画会議での“原作は何百万部売れているから”は、説得力と安心感があるんですよね。原作はヒットしているわけだから、大コケはしない確率が高い。オリジナルドラマをゼロから作ることに比べれば労力も少なくてすむ。でも、テレビドラマの醍醐味はオリジナル脚本だと思うので、残念な風潮です」(碓井教授)