アメリカのコメディー俳優、スティーヴ・マーティンが書いた『ピカソとアインシュタイン~星降る夜の奇跡~』は、奇想天外なストレート・プレー。パリのバーで、もしも若き日のピカソとアインシュタインが出会っていたら? という発想のもとに繰り広げられるファンタジックなコメディーだ。この作品で三浦翔平さんが(岡本健一さんとWキャストで)挑戦するのは、若きピカソと未来からの訪問者という2役。一風変わったコメディーは、三浦さんの目にどう映ったのだろう。
せりふの面白さを稽古場で発見中!
「最初に台本を読んだときはわけがわからなくて。どこが面白いのか、と頭を抱えました。なぜなら、文化の違いという部分が大きい。英語から日本語に訳すとヘンな感じで、説明されて初めて“あ、なるほど”と思うことが多くて。だから稽古をしながら演出家のランディ(ランダル・アーニー)さんとみんなで、どうしたら面白さが伝わるか話し合って、せりふを手直ししました。最初はわからなかったものが、いまは“これは面白い!”と思えるものになっています」
日本公演を2度も手がけたアメリカの演出家、ランディさんの稽古場は「とにかく楽しい」そう。
「まずは役者に“1回やってみて”と自由にやらせてから、調整を加えていく。ダメとは言わないで“最高、とてもいい。でも、こうしたらもっとよくなる”と、常に褒めてくれます。僕は褒められて伸びるタイプみたいです(笑)。
ランディさんは俳優でもあるから、俳優の気持ちもよくおわかりなんですよ。“立ち稽古までに台本を全部頭に入れてこい”という演出家もいますが、ランディさんは“そんなの無理だよ”と。“最初は台本を持っていていいから、動きながら少しずつ固めていこう。俳優のやりやすいように作っていくのが僕の演出だ”と言ってくださるんです」
三浦さんが演じるピカソ、未来からの訪問者の役はどんなキャラクター?
「このころのピカソは“青の時代”といって、暗く青い絵ばかりを描き、画家として模索している最中なんです。すごくフラストレーションがたまっていて、あともうちょっとで何かをつかめる、という時期。この時期のピカソ、人としての印象は最悪です(笑)。僕はあまり共感できません。ただ、女性たちを絵の活力にしたセンスは素晴らしい。
対するアインシュタインも、相対性理論を見いだす、ちょっと前。だからこの作品中に天才それぞれが進化する、というところが見どころのひとつだと思います。未来からの訪問者は、やっぱり世界的に有名な大スターの若いころ。登場自体が壮大なギャグともいえる(笑)。衣装からして、まさに、という感じです(笑)」