その点、「ポツンと一軒家」のスタッフは、地域で生きる人々へのリスペクトがベースにあり、「お邪魔させていただけませんか?」という姿勢が画面からにじみ出ています。多くの人々がテレビに抱いているであろう、傲慢さを感じないところも人気の理由となっているのでしょう。
上から目線が少しでも表れるとアウト。持ち上げすぎても小バカにしているようでアウト。ほどよいさじ加減が必要な番組であり、スタッフのバランス感覚が鍵を握っているのです。
常に視聴者目線のカメラワーク
「ポツンと一軒家」が人気を集めている理由として、もう1つ挙げておきたいのが、エンタメ性の高いドキュメントであること。実際、家を探す道中、住人へのインタビュー、屋内の様子などのカメラワークはすべて視聴者目線であり、「僕(私)が山奥の一軒家を訪れている」と感じる演出を施しています。
9日の放送では、最初にスタッフがたどり着いた中武五月さんの家は、目指している一軒家ではありませんでした。しかし、「ここも十分、ポツンと一軒家だから」と急きょ取材を依頼。中武五月さんの取材を終えると、本来の目的地だった中武ヒデ子さんの家を探し出して取材し、2軒分の放送をしたのです。
もともと同番組は、「本当に家があるのか?」という辺境地を冒険するようなエンタメ性が魅力の1つでした。「ふもとでの聞き込みから、けもの道や断崖絶壁の道を進み、やっとたどり着いた」という厳しい過程を経ることで、「そこに住んでいるのはどんな人なんだろう?」という興味を高めていく構成の番組なのです。
そんな一連の流れは、視聴者に「足を使った地道な努力であるうえに、うそがなさそう」と感じさせるもの。放送作家による創作や台本ではなく、テレビ画面からドキュメントが持つ本物の力を感じているのでしょう。
つねにライバル番組として挙げられる「イッテQ!」もドキュメント要素が高い冒険バラエティーですが、こちらは芸人たちのキャラクターや演出をベースにした構成。笑いの手数が多い反面、やらせ問題が発生した背景もあって、「キャラ重視」「演出過多」と感じる人がいるのも事実です。