前出の『GEM Partners』の利用率ランキングによれば、直近の勢力図としてはAmazonプライム・ビデオが強く、次点にHuluNetflixが続く。これらはフルラインナップ型と呼ばれる、幅広いジャンルの作品を網羅したサービスだ。

 西田さんに各サービスの特徴を解説してもらった。

映像サブスク12種の違いは?

「多くの会員を抱えるAmazonプライム・ビデオは、迷っているならまず登録しておいてほしいサービスですね。そもそもは有料会員である『Amazonプライム』の特典のひとつで、配送料無料などの恩恵もある。通販をよく使うのであれば相対的に割安になるためお得に使えるはずです。

 Huluも国内では人気のあるサービスですが、日本テレビ系の人気ドラマの後日談を描いたスピンオフ作品が配信されることも。同局のドラマを見逃したり、録画し忘れた番組を見るのにも役立ちます。

 前出のNetflixはオリジナル作品が目立ちますが、欧米のみだけではなく世界中からの作品が集まっており、とりわけ海外ドラマに興味があるならば選択肢に入れておきたいところです」

 海外発の映像系サブスクリプションが台頭する一方で、国内発のサービスも存在感をみせている。

「USENの子会社が手がける『U-NEXT』(ユーネクスト)は、電子書籍による雑誌の読み放題もついてくるサービス。厳密には完全な課金制ではなく、見放題できる作品に加えて毎月付与されるポイントで最新作を購入できるのですが、新作映画に興味がある人におすすめです。

 また、NTTドコモとエイベックスが運営する『dTV』はエイベックス系アーティストのライブ映像を配信しているほか、韓流ドラマにも比較的強いのが特徴です」

 さらに、近年はテレビ局が運営する映像系サブスクも目立つ。

「NHKの番組を見たいのであれば、やはり同局の『NHKオンデマンド』がベスト。過去に放送された大河ドラマや連続テレビ小説も楽しめます。民放でいえば、無料の『TVer』(ティーバー)はキー局や地方局の番組を放送終了後から原則1週間は視聴できるので、アプリを入れておいて損はありません。

 また、先述したように日本テレビ系の番組がそろうHuluのほか、テレビ朝日系であればサイバーエージェント共同運営の『AbemaTV』(アベマティービー)、TBS系のドラマやテレビ東京系のニュースなども見られる『Paravi』(パラビ)、フジテレビが手がけるオリジナル作品も充実した『FOD』と、テレビや録画機器を使わずとも各局の番組を楽しめるようになっています」

 また、特定のファン層に的を絞ったサービスも注目度が高まっている。

「スポーツ中継に特化している『DAZN』(ダゾーン)は、地上波では見る機会の少なくなった野球中継やサッカー日本代表戦などを楽しめるサービスです。今年3月にサービス提供を開始した『Disney DELUXE』(ディズニーデラックス)も要注目。ディズニー作品はもちろん、『スター・ウォーズ』や『アイアンマン』などのマーベル作品も見られるので、ファンは入っておいて損はないはずです」

 ここまで紹介したサービスはごく一部で、今秋にはアップル社が手がける『Apple TV+』の参入も予定されており、映像系サブスク市場は今後も競争が激化しそうだ。'20年の東京オリンピックでも動画配信による生中継が強化される見通し。かつての大会でテレビが家庭へ普及したのと同じく、動画配信がより身近に浸透するきっかけとなるのかもしれない。


《PROFILE》
西田宗千佳さん ◎フリージャーナリスト。主な著書は『ミライのつくり方2020-2045 僕がVRに賭けるわけ』など多数