事件取材を通じて痛感したこと
夫の誠さんは上場企業の営業職として働き、定年後は東海林さんと買い物やドライブを楽しむなど穏やかな日々を送っていたが、昨年の夏、持病の腎臓病で亡くなった。東海林さんが言う。
「夫は私が出張中に子どものお弁当をつくったり、娘の髪を結ったり、よく家事に協力してくれました。
それでもその仕事をどうするんだ? と言われたことがあります。辞めろということかなと思って1週間くらい考えた後に、面白くなってきたところだから辞められないと言ったら、じゃあ日本一のリポーターになれと言われました。それで頑張れたのかはわかりませんが、いつも応援してくれたことには心から感謝しています」
「女子高生コンクリート詰め殺人事件」「市川一家4人殺人事件」「大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件」など凶悪な少年犯罪も数多く取材した。時を経て、その少年たちの判決を知ったとき、いつも胸をよぎるものがある。
「その子たちは本当に悪いことをしたから当然なんだけど、やはりかわいそうだったなと思うんです。罪を犯した人間にそんなことを言うなんてと大方の人は言うかもしれませんが、いろいろ取材をしていく中で、やはり家庭や環境に問題があって、その子だけが悪かったんじゃないと思ったんですね。
ただただ、自分は母親に愛されたとか誰かに大事にされたという実感があれば、そんな事件を起こさなかったかもしれないと思うんですよ」
事件取材を通して、親子の愛情の大切さを痛感したという東海林さんは、まずは子育て中のお母さんたちが笑顔でいられるように応援したいと話す。
「講演会で幼稚園のお母さんたちにお話しする機会があるんですけど、“うちの子、お弁当食べないんです”なんてエレベーターの中まで追いかけてくる方があるんです。近所の人には話せないけど、この人に話してみようと思ったのかな。たぶん必死になって育てているのよね。だから大丈夫、お腹がすいたら食べるものだから、なんて言うんですね。
小さいお子さんを連れているお母さんに会うと、可愛いですね、何歳ですか? なんて声をかけたり、エレベーターでバギーの人を先に降ろしてあげたり。ボランティア活動はなかなかできないですけど、そういう何げないことでお母さんたちをホッとさせてあげられたらなと思っています」