社会人男女310人に対する神童についてのアンケート
(「マイナビ学生の窓口」より)

Q:地元の学校に“神童”のように扱われた子どもはいましたか?

いた 40人(12・9%)/いなかった 270人(87・1%)

Q:その“神童”たちは、その後どうなった?

・灘中に進学した(男性/28歳/団体・公益法人・官公庁)

・地元トップの高校へ進み、学年トップのまま卒業ということまでは知っている(男性/21歳/ホテル・旅行・アミューズメント)

・京都大学へ進学して、今は大学院で研究している(女性/22歳/団体・公益法人・官公庁)

・カッコよく、ハンサムだった神童だったが、大学でノイローゼになりダメになってしまった(女性/50歳以上/商社・卸)

・有名中学に進学したがなじめずに中退。引きこもりになりその後、プロボクサーを目指したが挫折し、今はフリーター(女性/31歳/運輸・倉庫)

・東大に行き実家の薬局を継いだが、商売が下手でその家は売りに出されてしまった(男性/47歳/電力・ガス・石油)

Q:“神童”と呼ばれていたあなた、今はどんな生活を?

・高校も進学校に行ったが、その中では平凡な存在となり、普通に暮らしています(男性/50歳以上/電機)

・頭がいいと思いすぎてつまずいた。就活は必死にやって希望の業界に進んでいる(女性/23歳/団体・公益法人・官公庁)

小林さんがアンケートを分析

 この結果は、非常に面白いですね。神童がいた、と答えた人が1割程度というのは少ない気がします。昔は、そんな存在が学校にひとりふたりいたじゃないですか。

 これは取材している中で聞いた話なんですけど、「僕はなんでも知っていて友達に教えてあげたかったけど、いじめられるので黙っていた」という人がいました。悲しい話だけれど、神童ぶりを発揮すると、ウザがられる。“あいつ、すげぇ。生意気だからつぶせ”って。

 昔と違い、今は友達グループの中でうまく生きていく知恵として、あまり目立ったことはしないのかもしれません。帰国子女がわざと下手な英語を話すように。こういう状況が神童はいなかった、ということにつながっているのではないでしょうか。

 “神童”たちの人生の岐路は、初めて挫折を味わってから。自分はトップが当たり前だったけど、もっと上がいた、こんなはずじゃなかった……。そこからどうするかですね。その人の意思というか、生き方の問題ですから、周りは何も言えませんけど。凡人として静かに生きるか、それまでとは違う道を探すか、ですね。

 自分が“神童”と呼ばれていたと言える人は、本当に羨ましい。目指していたトップの学校に入ったら、自分は普通なんだ、と思える感覚は常人には理解できませんから。


《PROFILE》
小林哲夫さん ◎教育ジャーナリスト。教育、社会問題を総合誌などに執筆。頭のいい人はどんな大人になっているのか、という疑問から書いた『神童は大人になってどうなったのか』(太田出版)など著書多数