樹木葬や海洋散骨の人気も女性が牽引
樹木葬や海への散骨の人気を牽引(けんいん)しているのも女性だ。
樹木葬は、個々に樹木を墓標とするものや、シンボルツリーの周辺を広く納骨場所とするものなどさまざまな形態があるが、「なんだか自然っぽい」というイメージが人気上昇の理由のようだ。とりわけ近年、注目されているのが、四季折々の花を植え、ヨーロッパの庭園さながらにガーデニングされた樹木葬墓地。郊外の霊園ばかりか都心の境内墓地にも続々出現し、ひとり用、夫婦用、家族用と多様化するニーズに応える仕組みが整ってきている。
海への散骨は、「故人の意思を尊重して」というケースが圧倒的に多いが、私が乗った横浜港から出航した散骨船には、「“人は死ぬと窒素、リン酸、カリウムに戻る。戒名もお墓も線香もいらない”と口すっぱく言っていた夫の望みをこれで叶えられる」という60代の女性がいた。亡き夫の希望とはいえ、実行に移したのは彼女だ。散骨をすませると「花びらとともに夫が海の中に消えていき、自然に還っていった気がします。これでよかった」ときっぱり。同行していた子どもたち(30代)に、「私のときも同じように散骨して」と話すのが聞こえた。
夫に内緒で女性専用のお墓を購入
知る人ぞ知る存在なのが、首都圏と関西に設けられている「女性専用」のお墓だ。
4年前に埼玉県鳩山町の見晴らしのよい高台にできた、樹木葬・共同墓形式の女性専用墓『なでしこ』は、離婚してシングルになった人ばかりか、普通に結婚している人も購入している。
そのひとり、茨城県に住む岸由香里さん(仮名=61歳)は、「40代から、ひとりでお墓に入りたいと思っていた」と言った。夫は長男で、先祖代々のお墓を継ぐことになる。夫婦仲は悪くない。「私も、当然そのお墓に入ると思われているんでしょうが、義父母とは前々からウマが合わず、死んでまで一緒はイヤなんです」。
息子に打ち明けると、「めんどくさい人だなあ」と言いながらもネット検索して見つけてくれたのが『なでしこ』だった。約10万円と安く、「2か月間生活費を切り詰めて捻出し、契約しました」。夫にはまだ内緒で、打ち明けるタイミングを計っているという。岸さんは女子校育ちで、元保育士。「女ばかりの環境が居心地よかったから」とほほ笑んだ。