可憐な女形から、冷徹な悪役まで。独特の存在感で作品に花を添え続けるバイプレーヤー・篠井英介さん。1年ちょっと前から、フリマアプリ『メルカリ』にハマっているという。

捨てられない、でも、いらない”がポイント

「僕は配偶者もおりませんし、ひとり者。故郷の金沢には弟が2人いて、何かあったときには彼らに面倒を見てもらうことになっちゃうので、なるべく身ぎれいに。いつどんなことがあっても、残った人に迷惑をかけたくないと思い、2年ほど前からものを減らし始めましたね

 とにかく捨てようと、まずは大量の本を古本屋に引き取ってもらった。では、その次は? 捨てるにはつらく忍びないが、とはいえ必要ではないものたちに悩まされた。

“捨てられない、でも、いらない”がポイントでした。そんなとき、知人から“『メルカリ』、わりと便利だよ”と教えてもらい、試しにアプリをダウンロードしてみたんです」

 のぞくと、実にさまざまなものが売られていた。

「意外なものもたくさんあって。ブランド物のリボンや紙袋、使いかけの化粧品とか。トイレットペーパーの芯だろうがどんぐりだろうが、売れるときは売れるんですって(笑)。だから、“あんまり恥ずかしくないんだな”とわかり、試しにやってみることに」

 ネットでのショッピング経験はあるが、自分のものを売るのは初めて。

‘01年、舞台『欲望という名の電車』に主演。「女役を女形がやるのはNG」とする著作権者を、演技で納得させた (C)谷古宇正彦
‘01年、舞台『欲望という名の電車』に主演。「女役を女形がやるのはNG」とする著作権者を、演技で納得させた (C)谷古宇正彦

「僕は『星の王子さま』が大好きで。今日もTシャツ着てますけど(笑)。陶器のお人形を20個くらい集めてたんですね。飾っていたこともあったんですが、ホコリもかぶるので、箱にしまっていたんです」

 しかし、これがなかなか場所を取る。

「これは捨てられない。お金のない若いときからコツコツとためて、愛おしんだものでしたから。でも“もう、いらないな”と思って。お気に入りを2つばかり残して、思い切って全部いっぺんに4万円で出してみたんです」

 スマホで商品を撮影し、紹介文を書き、出品。なんと、たった30分で売れた。

「“やったー!”と思いましたね。こんなに早く売れるなんて驚きました。ちょっとしたお小遣いにもなったし、楽しい。味をしめました(笑)」

 売れた商品は、梱包して発送する。

「大きな段ボールを買ってきて、その中に全部入れました。隙間にはプチプチの緩衝材を入れて。梱包が面倒という人もいるでしょうけど、僕は梱包作業も楽しんでいますね。紙袋や緩衝材もきっちりとっておくほうなので」