10月13日、新シーズンが開幕したばかりの日本の男子プロリーグ「B.LEAGUE」(以下、Bリーグ)に今、注目が集まっている。観客数は年々、増加傾向で、今や女性客が半数以上を占めるという。そんなバスケ界で「革命児」と呼ばれているのが『千葉ジェッツふなばし』の島田慎二会長。僅か8年前、存続が危ぶまれていた弱小チームを日本一に大躍進させた。3年連続リーグ観客動員数1位の人気チーム、その成長の秘訣を島田に聞くと、
「見に来ればわかりますよ」と自信たっぷりに微笑んだ。
負けても“来てよかったな”と思えるクラブへ
「Go Jets! Go Jets!」
プロバスケットボール・Bリーグ開幕前のプレシーズンマッチでありながら、満員近い観客が大声援を送る9月15日の船橋アリーナ。地元に本拠を置く千葉ジェッツふなばしはBリーグ・アーリーカップ2019関東のタイトルを目指し、準決勝・宇都宮ブレックス戦に挑んでいた。
9月の2019年ワールドカップ(中国)に参戦したばかりの比江島慎や竹内公輔、バスケ界のレジェンド・田臥勇太らが並ぶ強豪相手に、Bリーグ初の1億円プレーヤー・富樫勇樹を擁する千葉は好発進を見せた。だが、第2クオーターに入ると相手の猛追を受け、後半開始早々に逆転を許してしまう。そのまま追いつけず、最終的には75対84で苦杯。ファイナルに進むことはできなかった。
「本当の勝負は10月から始まる公式戦」と長期離脱から復帰した富樫は前を向いた。
彼らを支える赤いTシャツを着たブースター(ファン)も悲観的にはなっていなかった。この大会こそ3位に終わったものの、新シーズンに期待を抱いた人が少なくなかったからだ。熱狂的バスケファンのみならず、トップ選手に憧れる子どもたちが目を輝かせていた。
試合中にパフォーマンスを繰り広げるチアリーダーも弾けんばかりの笑顔を見せ、社員やボランティアなどのスタッフもイキイキとした表情で働く。千葉ジェッツを取り巻く人々が作り上げる船橋アリーナの熱気と興奮は、未来への大きな希望を感じさせた。
彼らの一挙手一投足を、会長に就任したばかりの島田慎二(48)はあらゆる角度から見つめていた。なじみのお客さんから「島田さん」と声をかけられれば気さくに応え、運営に携わる面々に「頑張れよ」と声をかける。現場の人間にも「ご苦労さん」と肩を叩くなど、細やかな気配りを忘れない。
アリーナ入り口付近には幼児用の遊具が置かれ、子どもたちが楽しそうに遊んでいた。千葉ジェッツのホームゲームのときは無料託児所を設置。親子でバスケを楽しめる工夫を凝らしている。飲食関係もアプリを使って観客席で注文し、できあがったら受け取りにいくシステムを導入。
「女性や若者にも喜んでもらえるサービスが大事」
と島田は強調する。
「千葉ジェッツふなばしを取り巻くすべての人たちと共にハッピーになる」
自身が掲げた活動理念を体現すべく、トップ自ら全身全霊を注ぐ様子が色濃くうかがえた。
「スポーツは勝てるときもあれば、勝てないときもある。勝てなくても“来てよかったな”と思ってもらえることがクラブとして重要なんです。チームを強くすることも、お客さんに喜んでもらうことも、ホスピタリティーやクオリティーを愚直に上げていく努力次第。そう思っています」