“裁判員の接遇”に悩んだ裁判官
だが、運用現場では苦労や戸惑いも。開始当初から関わった、東京地方裁判所の小森田恵樹判事が当時を振り返る。
「裁判官のことを“わかってくれるのか?”とか、逆に“裁判や司法に初めて触れる方々をうまく接遇することができるか?”という不安はありました。準備は文字どおり手探りで“何人の候補者に集まってもらえばいい?”とか“候補者への質問の仕方は?”から、ですよ。裁判官が上から目線で裁判員に発言したりするわけにはいきませんから。そもそも接遇とは、“何を、どのくらいする必要があるのか?”ということも、皆目わかりませんから(苦笑)。書記官や事務官も一緒に検討をしましたね」
同じく東京地方裁判所の村田千香子判事の裁判員裁判は、施行から約5年後。
「それでも実際やるまでは“どういう方が来るんだろう?”“どう進んでいくんだろう?”と」
言葉ひとつとっても、裁判で普通に使われる用語は一般的ではなかったり、意味合いが異なる場合もある。例えば“殺意”は、
「一般的には“殺してやろう”という、積極性まで含むようなイメージで理解されていると思うのですが、法律的には“死んでもかまわない……と思っていた”のように積極的に“殺してやろう”までいかなくても殺意だったり。そうした言葉ひとつまで“裁判員の方々にわかりやすい表現は?”と、改めて考える必要がありました」(村田判事)