菊間千乃アナの現在は……

 女子アナから弁護士へという転身を遂げたのは、菊間千乃さんだ。フジテレビアナウンサー時代の'05年春にロースクール・大宮法科大学院大学に通い始めたが、司法試験合格へはイバラの道だった。同年夏、NEWSの未成年メンバーとの飲酒が発覚。バッシングのなかで、勉強に手がつかなくなってしまった。

 1年後、仕事には復帰したが、司法試験の受験勉強に専念するために'07年いっぱいでフジテレビを退社した。のちに『週刊文春』では当時をこう振り返っている。

《この先アナウンサーとして5年後、10年後があるかと考えると、あまり明るい未来が見えなかった。それより、長い将来を考えたとき、弁護士として生きる方向に進もうかなと》

 とはいえ、一度目の受験は失敗で、無職として生きる不安にさいなまれることに。それでも猛勉強を続けられたのは、'98年に負った重傷による「ケガの功名」のおかげでもあった。『めざましテレビ』(フジテレビ系)で生中継をしていてビルの5階から転落。死んでいてもおかしくない事故から生還した喜びを思い出し、気持ちを奮い立たせたという。

 二度目の挑戦で司法試験を突破し、'12年から弁護士活動を開始。元・女子アナらしい聞きやすくて明快な解説で、テレビでも活躍中だ。

 そんな有名人のセカンドキャリアを考えるうえで、伝説ともいうべきケースが三浦百恵さんだろう。“山口百恵”として芸能界のトップに君臨していた'80年に、結婚して21歳で引退。今年、キルトの作品集『時間(とき)の花束 Bouquet du temps [幸せな出逢いに包まれて]』(日本ヴォーグ社)を出版して話題になったが、本業はあくまで専業主婦で、その立場を40年近く貫いてきた。

 ただ、仕事を辞めて家庭に入るという決断は当時、批判にもさらされた。「あなたのおかげで、女性の地位は十年前に逆戻りしちゃったのよ」などという声も出たのだ。しかし、百恵さんは引退直前に出版した自伝『蒼い時』のなかで「世間に出て、活躍してゆくばかりが『自立』だとは決して思えない」と書き、こんな持論を語った。

《女にとっての自立を私は、こう考える。生きている中で、何が大切なのかをよく知っている女性。それが仕事であっても、家庭であっても、恋人であってもいいと思う》

 これは女性に限ったことでもないだろう。生きるうえで何が大切なのかを考えるからこそ、次のステージを目指し、それを知ることが新たな自立につながる。有名人のセカンドキャリア挑戦は、そんなことを教えてくれる。

PROFILE
●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に「平成の死」「平成『一発屋』見聞録」「文春ムック あのアイドルがなぜヌードに」などがある。