罪を犯した少女たちの実態

 2009年に『セカンドチャンス!』の設立に参加して以来、すえこさんは各地の少年院を訪ね歩いている。虐待だけでなく貧困家庭やひとり親家庭も多い。実態を見聞きするにつれ、ある思いに突き動かされるようになった。

「少女たちは罪を犯した加害者だけど、実は被害者でもある。“幸せになってもいいんですか”と言う子もいました。虐待する親をケアするとか、もっと根本から社会を変えたいと考えたとき、思いついたのが映画を作って現状を知ってもらうことでした」

 もちろん、映画作りに関しては、ずぶの素人だ。映画製作会社、法務省、文化庁、保護司の集まりなど、いろいろなところに足を運んだ。

「企画を話すとみんな“いいんじゃない。でも、お金はないよ”と。ああ現実って、こういうことなんだと感じたけど、私は自分のお金を持ち出してでも絶対に作ろうと」

 クラウドファンディングで製作資金を集め、ドキュメンタリー映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』が今年7月に完成。構想から8年かかった。

 撮影は法務省の協力を得てかつて、すえこさんがいた群馬県の少年院・榛名女子学園で1年間かけて行った。すえこさんは監督兼インタビュアーとして、在院中の少女たちの本音を引き出していった。

 美人局で逮捕された遥香(17=仮名)は親に2度見捨てられている。母が再婚し、新しい父に認めてもらいたくて難関中学に合格した。だが、父の転勤で両親と弟たちは県外に行き、遥香は学校を理由に祖母に預けられた。

「本当は一緒に暮らしたかったけど、言えなかった。逆らっちゃいけないんだって、自分の中で勝手に思って」

 寂しさから彼氏にすがりつくとDVを受けた。中学3年で家族と同居したが、友人とトラブルを起こして学校を退学に。疲弊した母が倒れ、父から「家に帰るな」と言われて、夜の街をさまよった。

「(美人局の)誘いに乗れば共犯の中に居場所はある。毎日、誰かしらと一緒にいたかったんです」

 少年院には家族全員で面会に来てくれた。家族の温かみに触れ、初めて家に居場所があると感じられた。

 窃盗で逮捕された沙羅(20=仮名)は2人暮らしの母と共依存のような関係にあった。中学生のころ母が薬におぼれ、沙羅も興味本位で飲むように。生活費を稼ぐため援助交際をしたり、食べ物を万引きして、母に渡していた。

「気づいたときにはお母さんのだらしなさが当たり前になってたし、私が悪いことをしても責めたり怒らなくなった。私は楽なほうに流されやすかったので、ちゃんと怒ってくれたほうがよかった」

 少年院の中で母との関係性を考えるようになり、出院後は父との生活を選んだ。

 母親に育児放棄された佳奈(18=仮名)は2歳から16歳まで施設で育ち、17歳のとき覚せい剤逮捕された。

「少年院で初めて甘えられた」

 出院式では教官と抱き合って泣いた。大阪で少年院出院者の自立を支援する社長のもとで働くことになり、寮に入った。だが、大変なのはそれからだった。