俳優の西田敏行が理事長を務め、女優の吉永小百合らが加入する日本俳優連合や、春風亭昇太が理事長を務める落語芸術協会ら実演家5団体が、俳優や声優、音楽家、ダンサー、落語家などを労災保険の対象にするように先ごろ、訴えた。
「世間の働き方改革の流れで、芸能人にこのような動きが出てきても当然。時代の要請です」
と演芸会主宰者。テレビ局のロケ中にケガをすれば(新しいところでは、俳優の佐野史郎がテレビロケでケガをした)、テレビ局が保証することもあるが、フリーの実演家が仕事中にのどを痛めたりケガをすれば、即、生活苦に陥る。それらを防ぐための要請が冒頭の訴えだ。
梅宮さんだって売却に踏みきった
ヒット作に恵まれ人気者になれば莫大な資産を築ける芸能人。ただそれは、ほんのひとにぎり。舞台でも映画でもドラマでも、多くの有名ではない人が、そられを支えている。
つい先日、フリーアナウンサーの笠井信輔が悪性リンパ腫になったことを公表し、同じくフリーアナウンサーで女優としても活躍する八木亜希子が線維筋痛症になったことを明らかにした。
両者の病気は労災ではないが、笠井はテレビ番組で「(フジテレビの)退職金を治療費に充てる」と明かしていた。
所属事務所がどれだけ面倒を見るのかは不明だが、かなりの売れっ子で資産がたんまりあるような芸能人でない限り、一寸先は闇なのである。
2019年12月に亡くなった俳優の梅宮辰夫さんは晩年、東京・渋谷の高級住宅地にあった邸宅を売り払い、神奈川・真鶴の別荘を居宅とした。
「渋谷の自宅の売却額は約2億円。自分の闘病生活がいつまで続くかわからないが、それだけあれば大丈夫と売却に踏み切ったようです」(スポーツ紙記者)
あれだけの大スターだった梅宮さんも、働けなくなった晩年には暮らしの心配をせざるを得なかったのである。
副業で飲食店経営に乗りだしたり、不動産資産を買い求めたりできる芸能人は、もともとの稼ぎがある一部の人間だけ。光り輝くスターを支える芸能人がいてこそ、芸能界は成立する。肉体を使う芸能人が少しでも安心するために労災保険の対象になるように求める動きは、夢を売り支える労働者としてごくごく自然の流れだ。
<取材・文/薮入うらら>