適職の発見率を高める『イリイスト転職ノート』の書き方
まとめると、『イリイスト転職ノート』の手順は次のようになります。
(1) 1日の終わりに、自分がその日に行った就職・転職に関する意思決定の内容を三人称で書き出す (2) 日記には最低でも15分をかけ、2段落ぐらいの文章を書く
ここで書き出す内容には、必ず以下の項目を含めるようにしてください。
◎どんなことを決めたのか?
◎ どのような流れで決定にいたったのか?
◎ その決定をするために、どのようなエビデンスを使ったのか?
◎ その決定により、どんな結果を期待しているのか?
◎ 自分の決定にどのような感情を抱いたか?
具体的な記載例は次のようになります。
【1】「逆求人型就職サイト経由で、衣類メーカーからメッセージが来た。とりあえず“彼”がネットでその企業について調べてみたところ、自社で製造ラインの一部を作っていることがわかった。これは、“彼”が重んじる『多様』の考えにも一致することから、1Dayインターンへの参加を決めた。“彼”が期待するのは、“どこまで多様性があるかを確かめられるか?”というポイントだ。インターンへの参加を決めたことで事態が一歩進み、“彼”はいい気分になっている」
【2】「“彼女”はどうすればいいかわからず、ひとまず自己分析のため、就活団体主催のグループディスカッションに参加。“学生時代に統計を履修したことを推したほうがいい”とアドバイスを受けたので、“彼女”はそれをベースにエントリーシートのひな型を作る。とりあえず達成感は出たが、これが果たして正解なのかまったく自信を持てていないようだ……」
『イリイスト転職ノート』をつけるメリットは大きく2つで、第一に意思決定の記憶をあとから改ざんできないのが大事なポイントです。
人間には自分の記憶を都合よく書き換える性質があり、例えば、「ちょっとネットで調べただけだが、実際に面接に行ったらよさそうな企業だった」のような結果が得られた場合、私たちは後から「自分のリサーチが成果を上げた」などと、事実とは違うストーリーに変えてしまうものなのです。この状態を放っておくと、いつまでたっても職探しの精度は上がりません。
もうひとつのメリットは、意思決定のパターンがハッキリすることです。後から日記を読み返すと、「自分はいつも少し華やかな業界に反応するところがあるようだ」「ネットの口コミを必要以上に信じがちだな」など、何らかの傾向が見えてくるはずです。その点で『イリイスト転職ノート』は、下手な自己分析ツールよりも正しく自分を見つめる機会を与えてくれます。
転職に関する記録や就活ノートをつけている方は多いと思いますが、その記述の多くは、会社やセミナーの雰囲気、面接の質問と回答、自己分析などの記録などに費やされ、自分が日々のなかで行った意思決定の流れを書き残すケースは少ないでしょう。転職や就職に関する作業をした日は、必ず意思決定の記録をつけてください。
【著者プロフィール】
鈴木祐(すずき・ゆう) ◎新進気鋭のサイエンスライター。'76年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ね、現在はヘルスケアや生産性向上をテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。自身のブログ『パレオな男』で心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続け、月間250万PVを達成。近年はヘルスケア企業を中心に科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演も行う。著書は『最高の体調』(クロスメディア・パブリッシング)、『ヤバい集中力』(SBクリエイティブ)他多数。