「泣き寝入り」と隣り合わせの危険
沖縄において、オスプレイやヘリ、戦闘機などの米軍機による騒音爆音被害、墜落事故、部品落下事件、あるいは米兵が起こす事件事故の多さは驚愕(きょうがく)すべきものがある。玉城知事就任後の昨年4月にも、米兵による殺人事件が北谷町で起きている。知事が「怒りを禁じえない」と記者団や米軍関係者に向かって述べたのは当然のことだ。
これまで許しがたい犯罪が起きるたび、知事をはじめ沖縄県民が怒りをあらわにし、米軍は綱紀粛正を誓い、またしばらくすると悲惨な事件が起きる。こんなことが何十年も続いている。そんな沖縄の現状を伝えようと、知事は全国キャラバンを展開。東京、大阪、名古屋、札幌をめぐり、基地問題を自分事として考えてほしい、と各地で訴えている。
「県外の方から、沖縄の基地負担の重さや事件事故の被害の深刻さが、実感としてつかみにくいと言われることがあります。私は、自分や身近な人が、米軍の関係する事件事故に巻き込まれたときのことを想像してほしいと問いかけています。現在の日米地位協定では、日本の捜査権が及ばず、あなたや身近な人が“泣き寝入り”しなければならない可能性があるのです、と。全国知事会でも重要な課題として扱われ、政府に対する地位協定改定への機運は高まっています」
2017年12月7日、宜野湾市の普天間基地に近い緑ヶ丘保育園に米軍ヘリの部品が落下する事故があった。園児の母たちのグループ「チーム緑ヶ丘1207」の訴えは、いたってシンプルだ。事故の原因究明を求め、その調査結果を知りたい。そして、訓練飛行コース外の保育園の上をもう2度と飛ばない約束をしてほしい、というものだ。
しかし、事故から2年以上たった現在も、米軍ヘリや軍用機は絶えず保育園上空を飛んでいる。なぜ保育園の上を飛ばないようにする、ということさえ実現できないのか。この疑問に対して、玉城知事は、端的にこう答えた。
「それは、日本政府がアメリカに対して要求していないからです。アメリカと地位協定を結んでいる他国、例えばイタリアにしてもドイツにしても、飛ぶなと決めた区域を米軍機が飛ぶことはまずありません。政治が決めたことを守るのが軍の本質なんです」