ちょっとでも強く言うと親からクレームが

 たしかに、何のためにやらされているのかわからなければ、(持久走など特に)手を抜く子どもが増えてもおかしくはない。

「僕自身、体力テストで人生が変わった。結果を見た先生が、“陸上をやってみないか”と言ってくれたことがきっかけでした。その後、再び体力テストを行うと、ハンドボール投げの成績がとてもよかったので、投擲(とうてき)種目に転向したんですよ(笑)。テストの結果を受けて、そのつど、生徒の向上心や向き不向きをリードしてくれる先生がいたから、僕はスポーツが大好きになっていった」

 国が“運動習慣の確立”というアドバルーンをあげたところで、子どもたちに向上心を抱かせるのは、現場の先生たちによるところが大きい。しかし、中学・高等学校保健体育教諭一種免許を持ち、同窓生の多くが体育教師になっているという照英さんは、

「ちょっとでも強く言おうものなら、親御さんやPTAから現場の先生にクレームがくることも珍しくないそうです。当たり障りのない教え方をすると、どうしても体育の現場から熱がなくなってしまう。僕には、先の全国体力テストの結果は、そういった体育の現場の停滞感も表れているような気がしてならない」

 と指摘する。子どもたちがスポーツの楽しさや魅力に気がつくためには、どんなことが必要か?

「スポーツの教育現場に携わる先生を育てる、それも見守る親を育てることが大事。まず、子どもたちをほめてあげること。“1位になったからすごい!”とほめるのではなく、1位になるために頑張ったプロセスをほめてほしい。同様に、勝負に負けたとしても一生懸命、頑張ったのなら、そのプロセスをほめてあげる。そうすると子どもたちは、またトライする気持ちが生まれます」

 スポーツをしましょう! と声高に叫んでも、現場や環境を軽視するような施策なら息も絶えだえになりそうだ。

子どもたちの体力低下は、子どもたちの体力を取り巻く環境の低下でもあると思う。ダイヤの原石がいるかもしれないのに……筋肉が泣いていますよ!」