世界保健機関(WHO)のパンデミック宣言から3週間。日本では五輪延期が決まり、都市封鎖の可能性も出てきた。経済へのダメージが広がる中、“世界同時不況”への不安が高まっている。生活防衛の手段はあるのだろうか──。
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郵便貯金ですらも安心できない
株式市場に衝撃が走ったのは3月16日のこと。米国株式市場で3050ドルという史上最大の一時下げ幅を記録。引きずられるように17日の日経平均株価も1万6378円の安値をつけた。1月17日の2万4115円の高値から3分の2に下落したのだ。
日本銀行の黒田東彦総裁は「リーマンショックほど経済が落ち込むとは考えていない」と話し、一方では西村康稔経済再生担当大臣は「リーマンショック並みか、それ以上」とも語っている。
いずれにしろ景気が悪化するという点では一致する。気になるのは、これが一時的な景気後退なのか、あるいは何年も続くような大不況の始まりなのかということだ。
主婦目線でお金の動きを分析している経済ジャーナリストの荻原博子さんは、現状をどう見ているのか。
「思い出してください。2019年10―12月期は、消費税を10%に引き上げたことや、大型台風や記録的な暖冬の影響もあり、GDPが年率換算でマイナス7・1%も落ち込むという事態になっていました。日本経済はデフレの泥沼でもがいていたわけで、そこに新型コロナショックです。さらにオリンピックの延期が決まり、三重苦が始まるわけです。景気の混乱は1~2年ではおさまらないと思います」(荻原さん、以下同)
働く人たちに景気の実感を聞く景気ウォッチャー調査でも、リーマンショックや東日本大震災以来の低い水準になっている。すでにみんなが大きな不安を感じているのだ。
これから私たちの生活はどうなっていくのか、どう対処していけばいいのか、荻原さんと一緒に考えていこう。
「大きな流れだと、株価が暴落すると年金資金が毀損(きそん)します。安倍政権になって公的年金の積立金の70%はリスクのある株や外国債で運用しているので、株価の下落によって大きく目減りします。2015年度にチャイナショックと呼ばれる株の暴落があったときも、たった3か月間で約7・9兆円という損失を出しています」
ただでさえ足りないといわれる年金資金が減ってしまうというのだ。当然、受け取る年金にも影響が出てくることになる。さらに、
「郵便貯金の30%は、為替変動リスクのある外国証券で運用されています。こちらも全世界不況では円高になると、目減りすることが考えられます」
郵便貯金は何があっても安心と思い込んでいる人が多いが、必ずしもそうとは言えないと荻原さん。