給与も同様です。企業側が、なぜ給与に差があるのかを明確に説明できるのであれば、それは同一労働同一賃金でも違反ではないんですね。
手当や待遇について、役職や責任などに応じて雇用形態で差をつけるかどうかを企業に決めるよう促すのが、この制度の目的なんです。
厚生労働省では、同一労働同一賃金に当てはまる、当てはまらないの例を提示していますが、これも例=正解ではないんです。
例の書き方が断定を避けて『そうなる可能性があります』と、非常にあいまいなため、例示されているもの以外にも、不当な格差が起こるケースが残る可能性があると考えられます。
同省のガイドラインでも《記載がない退職手当、住宅手当、家族手当等の待遇や、具体例に該当しない場合も、不合理な待遇の相違の解消が求められる。このため、各社の労使により、個別具体の事情に応じて待遇の体系について議論していくことが望まれる》とあります。
それらの《不合理な待遇の相違》は今後、誰かが裁判を起こし、法廷で決められていくことになるでしょう。ですから、非正規社員で働いていて、正社員と同じ仕事をしている、でも、いくら企業に訴えたところで不当な格差は埋まらない。そうなれば判断は裁判や第三者に仰ぐほかないとみられます」
正規と非正規で責任の違いは明確になる
Q3:非正規社員の給料って上がるの?
「正社員と同一の働きがあれば、基本給は能力や経験または成果など、その企業の基準に応じて支払われることになるでしょう。
仕事が同一なら同じ金額、異なればそれに応じた金額が支給されます。給与に関しては、今後は社内の評価制度が大きく関わってくるかもしれません。
非正規社員でも、とても優秀な方はたくさんいます。ただ、企業は“この作業ができる人にこの金額の給料をあげます”と作業内容や責任の違いなどで正社員と非正規社員を分けようとするかもしれません。判断基準を決め、評価するのは企業の人です。
例えば、業務で何らかのトラブルがあって、お客さんに対して謝罪をしないといけないとき、どこまで責任を持つかについても、その違いがあります。正社員は最後まで責任を取らないといけない。非正規社員は相手から最初にクレームを受けるだけでいい。
これは業務の違いになります。このように責任の違いは明確になると考えられます。そうなれば、“給料の金額が違ってもしょうがない”とされるんですね。
責任以外でも、仕事の能力や業務に置き換えると、正社員には能力の発揮が求められても、非正規社員にやってもらう業務内容を考えれば、非正規社員はこれだけで十分です、となる可能性があります。そうなれば現状よりも給与のアップを望むことはできなくなるかもしれません。
また、評価制度に関しても、頑張って仕事をしても、“会社はそこまで求めていない”と言われれば、その人が持つスキルも発揮できない。そうなれば給与だけでなく、業務の内容でも正社員との間には差がついたままになってしまうとみられます。
しかし、少子高齢化が進みこれからの人材不足の時代で、企業も能力の高い人に長く勤めてもらいたいと考えるようになりますから、そうすると『正社員登用制度』などを充実させていく企業も増えると思います。