会うことができないので、電話をしたり、LINEを入れたり、いつもよりも多く連絡を入れてしまいました。また、フルーツ、レトルトのおかゆ、インスタント味噌汁やスープを送りました。お見舞いの品を送ったことをLINEで知らせると、こんな返信が来ました。

「少し放っておいてくれないかな。熱があって体調の悪い病人に、何度もLINEや電話をしてくるのは、配慮が足りないよね。昨日母が、1週間分の食事を小分けにして持ってきてくれて、冷凍庫に入れて、帰っていったの。お見舞いの品を送ったというけれど、私が宅急便の人の前に出て行って受け取らないといけないよね。パジャマ姿では出ていけないので、着替えなくちゃいけないでしょ。母も、“無神経な人ね”と言ってたよ」

 このLINEが来て、誠司さんはガックリと肩を落とし、私に連絡を入れてきました。

「『ごめんなさい』と謝りのLINEを入れようかと思ったのですが、それをすると、『またLINEを入れてきて』と叱られそうでできずにいます。ご両親にお会いしてご挨拶させていただいたとき、『娘をよろしくお願いします』と言われてうれしかったのですが、お母さんから“無神経な人”と思われてしまったのかと思うと、心痛みますし、心が折れそうになります」

 佐恵子さんは、体調が悪くて心に余裕がなくなっていたのでしょう。

 もしかしたら誠司さんも、体調の悪い彼女に対してどう振る舞うべきか、もう少し想像力を働かせたほうがよかったかもしれません。

 ただ人の好意にも腹を立てる。イライラして厳しい言葉を投げつける。これはいかがなものでしょうか? ふたりが結婚したときの生活がなんとなく見えてきませんか?

 あれから誠司さんは、佐恵子さんに連絡を入れていません。こうなると“交際終了”になるのも、時間の問題でしょう。 

「コロナの中、会うのがストレスでした」

 また、こんなカップルもいました。

 昭一さん(39歳、仮名)は、百子さん(34歳、仮名)と1月にお見合いをして交際へ。そこから毎週のようにデートを重ねていたのですが、3月に入って世の中のニュースがコロナ一色になったころに、百子さんからこんなLINEがきました。

「しばらくの間、会うのは控えたいです。ずっと言おうか言うまいか悩んでいたのだけれど、コロナのニュースが毎日報道されている中で、会ってデートをしていることがずっとストレスでした。いつかは終息するだろうと思っていたら、状況は悪くなる一方。昭一さんに会うのが嫌なのではなく、こんな状況だから外出するのが嫌なの」

「デートしていたことがストレスだった」と言う言葉を聞いて、昭一さんは、すっかり落ち込んでしまいました。「不要不急の外出は、控えてください」と日本政府も小池都知事も、メディアを通じて訴えていましたが、昭一さんは、将来の伴侶となる人と会うことは、“不要不急の外出には当たらない”と思っていたからです。

「ランチをしながら、楽しく会話ができていたと思っていたのは、僕だけだったのですね。百子さんは、ストレスを感じていたんです」

 こう私に告げた昭一さんの声が、落ち込んでいました。