◎ひとまず別居して、婚姻費用を請求する手も
婚姻費用とは、夫婦が結婚生活を送るための必要費用。衣食住の費用、交際費、医療費、子どもの養育費や教育費、水道光熱費などを指す。
「夫は妻に対し、お互いが同レベルの生活を確保できるよう婚姻費用を支払う義務があります。たとえ別居中であっても、です」
婚姻費用も、養育費同様に算定表が裁判所のホームぺージで公開されている。
「婚姻費用は、夫が不貞をしていなくても、別居した時点で請求できます。養育費は離婚後に支払われるもの、婚姻費用は別居中に支払われるもの。両方は同時には受け取れません。また養育費よりも、婚姻費用のほうが高額です。離婚にこだわらず、婚姻費用をもらいながら別居を続けるという作戦もあるわけです。籍は抜かないので、夫は不貞相手と再婚ができないうえに、妻には婚姻費用を払い続けるわけです」
5.年金分割
「離婚の際の年金分割ですが、“将来、夫が受け取る年金の半分を妻が受け取れる”と思っている人が多いのですが、間違いです」
年金分割は、結婚期間中の厚生年金(公務員は共済年金)の夫婦の保険料納付記録を、当事者間で分割する制度。
「例えば、結婚後に妻が仕事を辞めて専業主婦に。結婚3年目で離婚した場合、3年間に夫が払っていた厚生年金の保険料の半額が妻に分割されるというわけです」
妻も厚生年金を払っている場合は、夫婦で合算したうえで、半分に分割する。
「夫より、厚生年金に加入する妻のほうが稼いでいる場合、年金分割請求をすると損することになるので要注意」
A:年金分割の制度は、厚生年金(または共済年金)の保険料納付記録を分割する制度。ゆえに、厚生年金に加入していない自営業の人は対象外。夫が自営業の場合、夫婦ともに国民年金のみ。自営業の妻が将来受け取れる年金は、月額6万5000円程度(令和2年度)。「厚生年金に加入し続けた夫と熟年離婚をした妻の場合は、だいたい月10万円程度受け取れるという試算も。「年金分割については、自営業の妻は圧倒的に不利ですね」
(取材・文/長谷川華)
【PROFILE】
弁護士・中里妃沙子先生 ◎弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所代表。年間600件以上の離婚相談に乗っている。気さくでやさしい超・敏腕弁護士。『女性弁護士がわかりやすく書いた! 離婚したいと思ったら読む本』(自由国民社)など著書多数