《健康法その4. 感情日記をつける》

 書くことで自分でも気づかない心のダメージを解き放ち、健康な心身が手に入るという感情日記」。その具体的な効果と方法とは?

自分の感情と向き合えば健康に!

「感情日記」とは、ストレスになっている出来事や心に傷を負った出来事について、日記を書くような感覚で記述していくこと。精神的ストレスが和らぎ、自律神経系や内分泌系、免疫系のバランスが回復。その結果、身体が健康的な働きを取り戻すという

 ただ日記を書くだけで健康になれるなんて、にわかには信じがたいが、欧米諸国の医学的研究では、血圧の低下や慢性痛の軽快、傷の回復を早め、ウイルス感染への免疫抵抗力が高まるといった驚くべき結果も証明されている。

感情には、瞬間的に出てくる本能的な一次感情と、一次感情に続いて生じる人工的な二次感情があります一次感情は自分でも意識しづらく、無意識のうちに抑え込んでいることが多いもの。感情日記を書くことで、その一次感情が発散し、それと正しく向き合うことで感情を支配していた歪んだ二次感情や二次的な病的身体反応の軽減につながると考えられます」

 と、精神科医の最上悠先生。それに加えて、日記を“書く”ということを通じて、認知症予防に大切な“脳のメモ帳”と呼ばれるワーキングメモリーが鍛えられる、うれしいおまけもついてくるとか!

【一次反応と二次反応の関係】病的な二次反応を抑えるには、一次感情に向き合うことが必要
【一次反応と二次反応の関係】病的な二次反応を抑えるには、一次感情に向き合うことが必要
【図表】人間の感情は2種類ある! 病的な“二次反応”を抑える「感情日記」のメカニズムを解説

 感情日記のつけ方に絶対的なルールはないが、書き方にはいくつかのコツがある。効果が出る感情日記の書き方のポイントを、以下にまとめてご紹介!

【書き始める前に】

□ “自分のため”に書くこと
□ 誤字や文法など、文章の完成度は気にしない
□ 書くものは、ノートでもパソコンでもスマホでも問題なし

【何を書くか】

□ 現在・過去にかかわらず、ストレスや過去にできた心の傷など、ネガティブな感情をテーマに書く。連日、同じテーマでもOK
□ 出来事の経緯や、周りの人との会話などを思い出しながら書き進める
□ 出来事の記述にとどまらず、当時の感情と現在の感情、それに対する洞察(なぜそう感じたか、どんな影響があるか、その出来事が身体の不調にどう影響しているかなど)を掘り下げる
□ 身体の感覚(“息苦しい”など)にも意識を向けて記述できるとベスト!

【書く時間・期間】

□ 1日15分〜20分、週1〜3日が目安。筆が乗っても、ほどほどでやめておくこと
□ 三日坊主でもかまわない。長く続ければ、効果は出やすい

【注意点】

□ いろいろな感情があふれてきても心配しすぎない。ただし、つらさが抑えられないときは無理をせず中断し医師に相談を

(取材・文/中村明子)


小林弘幸先生
 順天堂大学医学部教授。自律神経研究の第一人者であり、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した腸のスペシャリストでもある。著書に『自律神経を整える「長生き健康法」』(アスコム)
一石英一郎先生
 医学博士。国際医療福祉大学病院内科学教授、伝統医療と西洋医療との知見の融合や、最新の遺伝子学にも造詣が深い。著書に『医者が教える最強の温泉習慣』(扶桑社)
霜田里絵先生
 銀座内科・神経内科クリニック院長。医師・医学博士。アルツハイマー病や脳血管障害など、脳に関する疾患のスペシャリスト。著書に『一流の画家はなぜ長寿なのか』(サンマーク出版)

最上悠先生
 精神科医、医学博士。うつや不安、依存の治療に多くの経験を持つ。薬だけでなく最先端のエビデンス精神療法の専門家としても活躍。著書に『日記を書くと血圧が下がる』(CCCメディアハウス)