気にするなと言われても気になってしまう「耳鳴り」。実は、耳鳴りには脳の働きが大きく関わっていることがわかってきました。ツラい耳鳴りの治療最前線と改善のヒントをご紹介します!

耳鳴りの人は脳が過剰に働いている

 キーン、ブーン、ジーッといった音が聞こえる耳鳴り。原因はさまざまですが、なかでも、ひどい症状が3か月以上続く状態は「慢性耳鳴り」と呼ばれます。症状が悪化すれば、日常生活に支障をきたすことも。

 実は耳鳴りの病態が解明されてきたのは近年になってから。2019年になって初めて、医療現場で診療の指針となる『耳鳴診療ガイドライン』がまとめられました。

 それにより、耳鳴りの悪化には“注意力”が深く関係することが明らかになりました。ある研究で、重い耳鳴りに悩む人は注意力に関係する脳の部位が過剰に働いていることが判明。つまり、注意力の過剰な働きを抑えられれば、耳鳴り患者の多くは苦痛が軽減し、重症度が下がると考えられます。

 そのためには、注意力をオフにすること。しかし、無自覚に耳鳴りに注意が向いてしまい、そのせいでさらに注意が向き、より耳鳴りを大きく感じてしまうという悪循環に陥る人が多いのも現実です。

 そこで、最先端の科学とユニークな実験で日常の疑問を調査するNHKの番組『ガッテン!』では、診療ガイドラインから発見した、改善が期待できるワザを紹介しました。

 耳鳴りに悩む人の多くがいちばんつらいのは寝るとき。そこで“雑音”が眠りの救世主となる「音響療法」をご紹介します。

 音響療法は脳の注意力を利用した、慢性耳鳴りの治療法のひとつ。使うのは滝や小川などの音です。実は滝などの音は「ホワイトノイズ」と呼ばれる雑音に特徴が似ています。それは、低音から高音までのさまざまな音が、まんべんなく含まれている点。適切な音量で流せば、ほどよく耳鳴りの音を隠し、自然と耳鳴りに注意が向きにくくなるのです。

 福岡大学医学部耳鼻咽喉科教授の坂田俊文さんは「耳鳴りを100%消すことは難しいですが、ほとんどの方は耳鳴りがあっても上手に生活することができます。耳鳴りと付き合いやすくなる“きっかけ”を少しずつ見つけることがポイントです」と言います。

 坂田さんによれば音以外の方法でも耳鳴りへの注意をはずすことは可能。それは絵を描いたりスポーツをするなど、耳鳴り以外のことに集中すること。注意がはずれる時間が増えれば、耳鳴りが気にならなくなっていくそう。その経験を重ねると、耳鳴りとうまく付き合っていけるようになると考えられています。

実験でガッテン!

■耳鳴りが重い人ほど「注意力」がONになったままだった!

 イリノイ大学ファティマ・フセイン准教授らの研究チームは、重い耳鳴りの症状に悩む人や耳鳴りがあっても苦痛を感じていない人、そして、耳鳴りがない人など85人に協力してもらい、MRIを使って安静時の脳の活動状況を調べました。

 着目したのは、注意力に関係する「楔前部(けつぜんぶ)」と呼ばれる場所。本来、安静にしているときは活動が弱い部位ですが、耳鳴りがない人と耳鳴りの症状が軽い人に比べて、重い耳鳴りに悩む人は過剰に働いたまま。注意力のスイッチをうまく切り替えできないことが明らかになりました。


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出典◎Connectivity of precuneus to the default mode and dorsal attention networks: A possible invariant marker of long-term tinnitus Sara A. Schmidt, Jake Carpenter-Thompson, Fatima T. Husain NeuroImage: Clinical 16 (2017)

出典◎Connectivity of precuneus to the default mode and dorsal attention networks: A possible invariant marker of long-term tinnitus Sara A. Schmidt, Jake Carpenter-Thompson, Fatima T. Husain NeuroImage: Clinical 16 (2017)

耳鳴りから注意をはずす寝室ワザ

ステップ1→滝や小川の音を準備する

 滝や小川のせせらぎ、木の葉がこすれ合う音など、自然に聞き流せて意識に残りにくい自然環境音がおすすめ。低音から高音まで含んでいるため、いろいろな音を隠すという特徴が。そのため、耳鳴りを感じにくくして注意をはずしやすくしてくれるのです。ただし、波の音のように音量が変化するものは適していません。

滝や小川の音を準備する
滝や小川の音を準備する

ステップ2→“音に包まれる環境”をつくる

 用意した音源は枕元ではなく、耳から遠ざけて足元などに置き、スピーカーを壁側に向けるのがおすすめ。どこにスピーカーがあるのかわからなくなるように「音に包まれる」ことがポイントです。音に包まれると、脳が音の感度を下げて、耳鳴りを小さく感じられるようになります。

“音に包まれる環境”をつくる
“音に包まれる環境”をつくる

指導◎名古屋第一赤十字病院耳鼻咽喉科 部長 柘植勇人さん

※耳鳴りの原因はさまざまです。お悩みの方はまず、耳鼻咽喉科を受診してください。

■NHK『ガッテン!』今後の放送予定
総合テレビ毎週水曜午後7時30分~8時15分
総合テレビ翌週水曜午後3時08分~3時53分(再放送)

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※タイトルはすべて仮です。放送は変更になることがあります。