人付き合いを諦めたヒロシさんだが、「ソロキャンプ仲間」が多数いる。ソロなのに? と違和感を覚える人もいそうだが、彼なりの美学があった。
「僕はひとりで過ごしたい人間だけど、同じ趣味を持って、気が合って、距離感を守れる人は貴重です。価値観が近い人となら、うまくやれる。『あくまで別行動だけど、気が向いたら交流もする』くらいの付き合いができるソロキャンプ仲間は宝です」
続けて、ヒロシさんはこう語った。
「自分のことは自分でできる人同士なら、他人を背負わなくてよくて気楽です。もちろん、危険な状況になったら助けるけれど、『複数人でのソロキャンプ』なら、年長者だから仕切らなきゃとか、男だからしっかりしなきゃとか、一般社会で感じる重圧なしで付き合えるのがいいんです」
前向きに、ひとりを楽しむ心
九州出身のヒロシさんは、もうすぐ50歳になる。「男は稼いで、女は家庭を守るべき」という昭和の価値観で育てられたそうだ。結婚はとうに諦めているという彼だが、恋愛はどうなのか。
「歳をとってからは性欲もなくなって、本当に生きやすくなりましたよ。若い頃は、本当に苦しかったです。人並みに、モテたい欲もあったし。相手を探すためにコンパに行くけど、テーブルの隅っこでポツンとひとりでいるようなことが何度もありました。今は、女性より焚き火を眺めているほうが楽しい」
モテへのコンプレックスは、年齢が解決してくれたそうだ。
「人は何のために生まれてくるのか考えたんですけど『子孫を残すため』なのかなって。僕はもう、子どもを持つことはない。僕に関わってくれている人も、100年後にはみんないなくなって、全部なかったことになるでしょう? なら、人生をかけた暇つぶしを楽しもうと思って」
最後は、スッキリした顔つきでこう語った。
「僕はひとりが大好きだけど、じーっとタバコだけ吸って過ごすのは退屈。それなら、キャンプや仕事を楽しんだほうがいい。今は前向きにひとりを楽しむことができています」
小沢 あや(おざわ あや)コンテンツプランナー 、 編集者
音楽レーベルで営業とPRを経験後、IT企業を経て、2018年に独立。エッセイのほか、女性アイドルやミュージシャン、経営者のインタビューを多数執筆。Engadget日本版にて「ワーママのガジェット育児日記」連載中。豊島区公認の池袋愛好家としても活動している。