教師歴は約30年。大学卒業後、美術教師の道を選んだ。2000年には沼津市内の小学生による工作コンテストの審査員を務め、静岡新聞の取材に「子どもなりのこだわりや夢を感じる秀作が多い」と語っている。同年度、市教委の「教育研究奨励賞」の優良賞を受賞。こうした生徒指導などの実績が認められ学年主任、教頭と駆け上がった。
今春、現在勤務する公立中に赴任したばかりで「もうすぐ校長だったのに」(学校関係者)というタイミングだった。
勤務校を遡り、複数の教え子から話を聞いた。
「ほかの先生がジャージーなんかで通勤するなか、山本先生はいつもきちっとスーツ姿で、美術の授業もスーツでした。富士山の絵を描く授業があって、なかなかうまく描けないでいると、熱心に手伝ってくれたことを覚えています」
と30代男性は振り返る。
別の30代男性は、逮捕のニュース映像で流れた容疑者を「少しやつれたように見えましたね」と言う。
「硬派で威勢のいい先生でしたから。生徒から悩みを相談されるようなタイプではなく、生徒とは一定の距離を保っているようすでした。生活指導担当として校則を見直す立場でもありました」(同男性)
山本容疑者の母親は
やがて、人間性も丸みを帯びていったようだ。
「まじめに授業を受けなかったりすると厳しく叱られましたけど、誰にでもやさしくてみなから好かれていました。生徒が真剣に悩んでいると、ちゃんと話を聞いてくれましたよ」
と20代男性。
一方、同県富士市の容疑者宅周辺でも「礼儀正しく謙虚な方」(近所の女性)などと評判がよかった。妻子がおり、両親とも同居している。少女を車で連れ去った目的は何だったのか。
自宅を訪ねると、山本容疑者の母親が「お話しできないんです」と指でバツ印をつくりながら、「息子は悪いことをしていないと信じています」とだけ話した。車中で、少女の相談に乗っていたとでも言うのだろうか──。