結婚を機に仕事を辞め、子育てと家事に追われる主人公の苦悩を描いた原作に、多くの女性たちが共感し、映画版もヒット。韓国で「育児をろくにせず遊びまわっている害虫のような母親」を意味するネットスラング“ママ虫”と呼ばれた女性の理不尽さとは――。
韓国の1982年生まれの女性で最も多い名前“ジヨン”と韓国で多い名字をタイトルにした『82年生まれ、キム・ジヨン』。平凡な名前の女性を主人公にして、女性ならではの重圧や生きづらさを描いた原作は、韓国で130万部を突破するベストセラーに。
海外でも注目され、台湾、ベトナム、イギリス、イタリア、フランス、スペインなど18の国と地域での翻訳が決定。日本では2年前に翻訳本が発売され、16万部超えのヒット。
その原作を映画化。育児に協力的な優しい夫とかわいい娘とマンションで暮らすジヨン。妻として、母として生きるジヨンだが、心は壊れかけていた。
ときどき別人格になって“本音”を語るが、全く覚えていない。妻の異変に気づいた夫のデヒョンは、やんわりと精神科の受診をすすめてみるが、ジヨンは「疲れているだけ」と。日常に追われ“ママ虫”とも揶揄されたジヨンが見つけたものとは――。
ジヨンを繊細に演じたチョン・ユミは、韓国のアカデミー賞といわれる『大鐘賞映画祭』で、『パラサイト半地下の家族』のチョ・ヨジョンを抑え、主演女優賞に輝いた。夫役を演じた日本でも人気のコン・ユは「癒しと共感にあふれた物語に触れてください」とメッセージ。
コラムニストの辛酸なめ子さんは「女の人生の影の部分を、鉛筆デッサンのように繊細なタッチで描いた作品。影を描き込むことで社会の姿が浮き上がります。切なくて美しい映画に共感しながら見入ってしまいます」と感想を。
心にしみる一作。
3度目の共演で初の夫婦役
ジヨン役はチョン・ユミ(37)。その夫役はコン・ユ(41)。ふたりは映画『トガニ幼き瞳の告発』『新感染ファイナル・エクスプレス』でも共演。演技派のふたりが初めて夫婦役を演じた