厳密にペットの飼育による健康効果の調査をするのであれば、無作為に集めた人たちに同時にや犬を飼育してもらい、その人たちの健康状態が改善されたのかや維持されているかどうかを追跡調査する必要があるからです。

 もしくは次に紹介する研究のように、日常的な場面を想定し、を撫でている間の脳活動や撫でる前後の気分評定を行い、その効果を探る方法もあります。

 動物とのふれあいを通して、人の心を癒やし、ストレスを軽減する「アニマルセラピー」をご存じでしょうか?

 例えば、犬では老人ホームなどを訪問し、入居者と触れ合うことで癒やしの効果を与えるセラピー犬が存在します。

 それでは、を撫でることで、なんらかの健康効果があるのでしょうか?

猫を撫でるだけで幸せになる!?

 つい最近、東京農業大学の永澤巧さんが、「を撫でることの健康効果」を明らかにしました。

 この研究では、日常的にを撫でるという行動が、人の脳の活動や気分にどのような影響を及ぼすのかを調べました。

 実際に人がに触っているときの脳活動を調べ、その前後の気分評定を行いました。

 また、触る対象による違いを比較するために、に触る群と、ぬいぐるみに触る群とを比較しました。

 その結果、群でもぬいぐるみ群でも、ネガティブな気分が減少することがわかりました。

 その減少は、群で特に顕著でした。

 また、脳活動においてもに触ったときとぬいぐるみに触ったときで差が見られました。

 対象にしたのは、前頭前野の「IFG領域」という部位です。

 この部位は、非言語コミュニケーションや他者との関わりにおいて重要な認知機能を担っているといわれています。に触ったときの方が、ぬいぐるみに触ったときよりもその部位の血流が活発になっていることがわかりました。

 というポーカーフェイスの生き物に触ることで、「このコは何を考えているのだろうか?」という思考が行われ、この領域が活性化したのではと考察されています。

 さらに、他者との絆形成に関わるといわれている「オキシトシン」というホルモンの上昇も、群でぬいぐるみ群よりも多く見られました。

 オキシトシンは、免疫機能の向上やストレスの減少などのさまざまな健康効果があるといわれているホルモンです。

 を撫でると、いいことばかり起こるではないですか……!

 これらの結果から、に触ることはぬいぐるみに触るよりも、精神状態を改善させ、他者とのコミュニケーションを向上させる可能性があることが示唆されました。