依存症が病気だと思っていなかった
高知 依存症の人が「もうダメだ」と助けを求める状態になるのを、「底つき」と呼ぶんだけど、俺は留置所から出て2年で底つきになった。
そんなギリギリの状態のときに「ギャンブル依存症問題を考える会」代表の田中紀子さんから、突然メッセージが入ってきたんですよ。依存症に悩む人同士が自らの体験を語り合う“自助グループ”に参加するようになった。
それからは、世界が一変! 自助グループは、薬物に限らず、いろいろな依存症に悩む仲間や先輩がいて、俺と同じ苦しみやつらさを経験している人たちが回復していく場所だ、と知ることができた。
それまでの俺は依存症に関する正しい知識がまったくなかったんやな。そもそも、依存症が“病気”だということも知らなかったし、自助グループで同じ苦しみを抱える人に相談しなければ、明日進む道すらも踏みはずす可能性があったんですよね……。って、原田くん、全然しゃべってへんやん!!
原田 聞き入ってました……! でも、高知さんはギリギリのところで正しい知識を持つ人に出会えて、とても運がいいですよね。高知さんの人柄が“出会い”を引き寄せていると思います。依存症の場合、そういう人に出会えず、脱輪してしまうケースのほうが多いじゃないですか。
高知 たしかにそのとおり。俺から見たら原田くんもツイてると思うけど、最後に残るのは“人徳”。原田くんの人柄や、内面の本質が運を引き寄せるんやろな。
俺たちは若いころにやんちゃもしたけど、悪いことをしたらすぐに認めて謝ってきた。やんちゃなりの道徳を守ってきた人生はムダではなかったよ。若いころを振り返ると「俺はなんてひどいやつだったんだ……」とは思いますけど(笑)。
いろいろな反省も後悔もしてるけど、自分の生きてきた人生に対して“悔い”はない。
原田 そうですね。悔いと後悔は違うものですよね。
高知 うん。あのころは尊敬する先輩のように豪快に飲んで遊び、愛する人を大切にして“豪快に生きたい”と思っていたし、それがひとつの生きる道だった。でも、その青春を引きずったまま年を重ねて50歳で捕まってしまったことは本当に反省してる。いちばん心が痛むのは、芸能人が薬物で逮捕されて「芸能界には薬物が蔓延してる」と言われてしまうこと。本当はそんなことないのに、俺がイメージの悪化に加担してしまったのは間違いないですからね。
原田 たしかに、芸能人の薬物使用は、報道が過熱して目立ちますからね……。
高知 でも、今では俺はいい意味で、この過ちをこれからも引きずっていくし、自分にできることをひとつひとつやっていこう、と思えるようになりましたね。
仲間と一緒に自助グループを巡ったり、SNSで正しい知識を発信したりして“あなたはひとりじゃないよ”と伝えたい。それが俺の償い方であり役割やと思うし、終わりはないよね。