ポリ袋の消費量は2倍に増えた
「レジ袋万引き」もいる。
伊東さんはレジ袋そのものを盗んだ犯人を捕まえたことがある。被害額5円だ。
「セルフレジから1枚取ってレジ袋の精算をせずポケットに入れて売り場にいく。商品を精算後、先ほど盗んだレジ袋をポケットから出し、持参したように見せかけ商品を入れる。5円節約したいがための犯行ですが、これも万引きには変わりない」
レジ袋だけでなく、無料でもらえるポリ袋も店の備品。大量に持っていくと逮捕の対象になる可能性がある。
「“エコバッグが汚れるから”“ゴミ袋やペットの汚物処理などに使う”などの理由からポリ袋欲しさに買った商品を1点1点ポリ袋に入れる人や、ロールごと持っていく人もいます」(前出・同)
精算前の商品を持参したポリ袋に入れ、さも支払いがすんだように見せる万引きの手口もあるそうだ。
このような現状に前出・秋葉社長はため息をつく。
「ポリ袋の消費量は2倍に増えました。温暖化対策のためにレジ袋を有料化したはずなのに、これでは本末転倒です」
ほかにも『かご抜け』と呼ばれる、会計前の商品をかごやマイバッグに入れ、レジをスルーし、外に出て万引きする手口も増えているという。
しかし、万引き犯を捕まえるのはなかなか厳しい。
「コロナ禍でみんなマスクをしているため、顔がわかりにくく困っています。精算後の商品をレジ袋やマイバッグに入れず、手に持ったまま売り場に戻る人は特に難しい。精算がすんでいるのか、店員も迷います。不審な人物には声をかけますが、やっていない人にまで不愉快な思いをさせてしまうことも……」(同)
全国万引犯罪防止機構は、警察と連携。万引き防止を促すポスターを作成するなど注意喚起を行うが、事務局の担当者は厳しい現状を語る。
「店舗の中には万引きなどの被害届を出さないところも少なくありません。すべての事件で届けを出してくださいとお願いしていますが……」
というのも店舗の規模によっては事件の取り調べに従業員がとられると、その間の人手が足りなくなるからだ。
「多くの店舗が泣き寝入りをしている状況です。万引きによる損失が増えれば商品の価格に上乗せすることにもなりかねない。損失により閉店に追い込まれることも。そうなれば一般の顧客も被害者。一部の心ない人のせいで、みんなが追い詰められるんです」(前出・事務局)