ローンや借金は残された妻が支払う
遺言書がない場合は、相続人で遺産の分配を決める「遺産分割協議書」を作ることになる。
ただし、遺産はプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も相続することになる。支払いの義務は遺産を分割してもなくならない。
クレジットカードの未払い残高、ローンなどの残債、夫が黙って作った借金も相続放棄しない限り、相続人の妻に支払う義務が発生する。
住宅ローンの支払いは団体信用生命保険に加入していれば債務者死亡で免除される。だが、それ以外の車や高額な買い物で組んだ債務は残る。
「車などの残ったローンは妻が再契約し直すことになります。でも勤務先、収入などの面で審査に通らないことも。そうなると一括で支払いを求められることに。夫の生前に債務への備えをしておくことも必要です」
「手続きの期限は3か月です。あきらかに負債のほうが多い場合は相続放棄なども検討したほうがいいでしょう」
相続放棄の期限が切れるまで負債の存在を黙っている金融業者の存在もある。夫の死後、取り立てられるなんてことがないように資産も負債もすべて調べることが肝心だ。
気になる相続税は?
夫の収入によっては確定申告も必要になる。死亡した年の年金収入が400万円以下、その他の所得が20万円以下でなければ、死後4か月以内に所得税の準確定申告と納付をする。
払うだけでなく、申請すれば戻ってくるお金もある。
医療費の上限額を超えた分払い戻される高額療養費の払い戻し請求の対象になったり、公的医療保険の制度から、葬祭費や埋葬料の一部が戻ってくることもある。速やかに相談、申請しよう。
妻が気になるのが相続税だろう。しかし、妻が相続した財産が、法定相続分内または1億6000万円までならば、相続税はかからない。
「遺産が多ければ税理士などに依頼し、評価額を調べ、相続税を支払う必要かどうかを確認しましょう」
支払う必要があれば相続開始から10か月以内に申告して納付すること。納付が遅れると加算税などのペナルティーがかかるので注意して。
相続や死後の手続きには複雑な法律や条件があり必要な書類、法律や制度も多い。そのため1度は夫婦で終活アドバイザーや司法書士などプロに相談しておきたい。さらに、
「財産の洗い出しや戸籍謄本の取り寄せなど、生前にできる手続きは夫に“仕事”としてお願いしてもいいと思いますよ。頼られることは生きがいにもなるようです。
私が普及活動をしているエンディングノートは、相続を含めた終活準備に大変役立ちます。より充実した人生を送り、いい最期を迎えるためにも未来を見据え、夫婦でイキイキとした終活を行ってほしいです」
《PROFILE》
廣木智代さん ◎終活アドバイザー。ファイナンシャルプランナー。マネーの相談、相続や終活に関するセミナーや執筆なども行う。NPO法人【ら・し・さ】理事。https://www.ra-shi-sa.jp/