子育て支援を削って少子化対策になる!?
また、収入が多い親を狙い撃ちすることは、少子化対策の面からもデメリットが大きいと末冨さんは言う。
「ただでさえコロナ禍で生み控えが起きているのに、その動きがさらに強まるでしょうね。おそらく第2子、第3子が生まれなくなります。出生率が下がり、やがては待機児童そのものがいなくなる可能性だってあります」
そうなれば、まさに本末転倒となるわけだが、収入の多い親の手当を削ることが、どうしてそこまでの影響を起こすと考えられるのだろうか。
「国民生活基礎調査によると、子育て世帯のうち、年収1000万円以上なのは約15%、910万円以上が25%ぐらい。もし年収960万円以上が給付カットされたら、約2割もの世帯が影響を受けることになります。
その多くは都会に住んでいて、確かに給料も高いけど住居費や物価も高い中、必死で働きながら納税している人たちです。決して楽をしているわけじゃない」(末冨さん)
さらには日本ならではの事情もある。中所得や高所得の人ほど、結婚や出産などのライフイベントと、それにかかる費用を先々まで緻密に計算しながら貯蓄する傾向にあるという。そんな慎重な人たちが、児童手当を受け取る見通しが立たなくなったら……。
「日本では、都会の稼いでいるカップルは、子どもを産めるカップルの人口のかなりのボリュームを占めています。その人たちが子どもを産み育てる気がなくなれば大変なことになります」(末冨さん)
あんびるさんも、「少子化対策として共働きのための保育園をつくるのに、共働きの手当を削るなんて、アクセルとブレーキを同時に踏むようなやり方です」と、バッサリ。今回の案が、このところの女性活躍促進と矛盾する動きになると指摘する。
「特に問題なのは、(特例給付の)判定基準が稼ぎ頭の年収から、夫婦の稼ぎを合わせた世帯年収になること。共働きのカップルに対して、“共働きは損”というマイナスの心理的影響を与えることになってしまいます。
これから子どもを産んで頑張って働こうとしているカップルに、“妻はフルタイムではなく、非課税枠の範囲で働いたほうがいい”と思わせてしまいかねません。女性活躍を謳う今までの政策にも明らかに逆行しています」(あんびるさん)