「シングルから始めて、最終的にペアやアイスダンスにキャリアを移す選手は多くいます。でも高橋選手のように、ここまでシングルで大活躍した選手がアイスダンスに転向するというのは世界でもいないと思いますね」(折山さん)
高橋が活躍すれば、日本フィギュア界の展望は明るい。
「かつて女子シングルばかり注目されていた日本のフィギュア界に高橋選手が登場し、男子シングルにも光が当たるようになりました。アイスダンスは海外では昔から人気のある競技ですから、日本でも高橋選手の活躍でシングルと同じくらい話題になってほしいですね」(折山さん)
12月24日からは全日本選手権が控えている。
「未完成な部分も多く、1位を狙うのは難しいでしょう。大切なのは、ミスを減らし自分たちの色をしっかりと出すこと。焦って結果を求めるのは少しかわいそう。再来年の北京オリンピックまでにしっかりと練習を積み重ねてほしいと思います」(折山さん)
高橋大輔の群を抜く「才能」
高橋が中学生のころにコーチをしていた佐野稔さんは、才能に驚いたと話す。
「初めて大輔を見たときは、ジャンプする能力の高さ、氷上を滑るステップのうまさを感じました。中学生の時点で当時の一般選手の平均的なレベルは超えていましたね」
その強みが、アイスダンスではまだ生かされていない。
「アイスダンスの命は“ダンス”なので、ステップのスキルは生かせる部分があるでしょう。氷上での振る舞いを美しく見せるのは基礎としての滑りの技術ですから。それでも、2人での競技というところに難しさがある。シングル競技は“ひとりで好き勝手にできる”ところがいちばんの醍醐味。アイスダンスで重要なのはパートナーとのミックスの度合いです。コミュニケーションを常にとりあう難しさはありますね」(佐野さん)
NHK杯の演技にも物足りなさを感じていた。
「まだダンスはぎこちないな、というように感じました。パートナーとの世界を氷上で作り上げていくことに慣れるのが大切です。氷の上で勝負したい気持ちはあふれているので、オリンピックにも出場できる希望はあると思いますよ」(佐野さん)
新しく登場した競技にも表彰台のチャンスが出てきた。
「'14年のソチオリンピックから採用された団体競技は、シングル、ペア、アイスダンスそれぞれで順位ごとにポイントをつけ、総合の得点でメダルを決める競技なのですが、日本はシングルで上位の成績を獲得しても、ペアやアイスダンスで遅れを取ってメダルを逃しています。大輔の転向でアイスダンスに興味を持つ人が増え、将来的にメダルのチャンスが広がるといいですね」(佐野さん)