1971年3月の結婚翌年から48年。葉間肋膜炎、膠原病や直腸がん、大腸がん、心筋梗塞、呼吸器疾患など多くの病気と闘ってきた渡哲也さんが、2020年8月10日に肺炎で亡くなった。だが、その事実が石原プロから発表されたのは4日後のことだった。

発表を遅らせたのは、 “静かに送ってほしい”という渡さんの強い希望からです。葬儀はごく身内だけで、同じ事務所の神田正輝さんや舘ひろしさんも立ち会えませんでした」(スポーツ紙記者)

 実直な人柄で日本中の人気を集めた渡さん。その人間味あふれるイメージは映像の外でも変わらなかった。

「2007年にNHKでドラマ『新マチベン』を撮っていたときだったかな。何人かを連れて渡さんが局内の食堂に現れたんです」(NHK関係者)

 一般客は入れないとはいえ、単なる社食。いったい何を食べるのかと思いきや、

食堂でいちばん安い280円の“しょうゆラーメン”を全員のぶん注文したんだよ。特別なものが入っているわけでもない、普通のラーメンをね」(同・NHK関係者)

 そのラーメンの味を全員で共有することが、とてもうれしそうだった。

「“NHKに来るといつも食うんだ”と言ってたな。連れていたカメラマンが写真を撮ろうとすると、 “撮るな撮るな”って言いながらラーメンを指さして“早く食え、麺がのびちゃうぞ”と急かしてたっけ。単に写真が照れくさかったのかも(笑)。“うまいなあ。うまいだろ”とニコニコしてたのを、今でも覚えてるよ」(同・NHK関係者)

石原裕次郎とのCMはどうなる?

 渡さんが美味しいものを口にして微笑む場面といえば、なじみ深いのは日本酒『松竹梅』のCM。最新作では石原裕次郎さんと合成映像で共演も果たしたが、11月末に終了していた。

 発売元の宝酒造に聞くと、

故人を使い続けるのは失礼と思い、11月末で放映をいったん終了しました。ただ、渡さんとのCM契約は来年の9月までですので、再放映の可能性もあります」(広報課)

『松竹梅』の顔だった2人の後継は、石原プロの誰かに決まっているのか。

「今のところ、そういった話はありません」(広報課)

 石原プロにも聞いてみたが、

「決めるのは宝酒造さんですので、こちらが口を出すことではありません」

 2021年1月16日で事務所じまいとなる石原プロだが、渡さんを慕い続けた神田や舘の進退はまだ発表されていない。浅野謙治郎専務に彼らの今後を聞くと、

神田や舘は渡の遺志を守り事務所じまいまでは何も決めない、と誓っています。彼らが行き先を決めるまで、私たちは協力を続けるだけです」

 事務所がなくなっても渡さんの思いは受け継がれていく。