お叱りの裏には愛情がある
その後、ベテランスタッフの茜さんがお叱りを披露してくれたのだが、こちらはかなりの迫力。のっけから表情は険しく、依頼者にガンを飛ばし、ときに「ちゃんと目ぇ見ろってんだろ!」とドスのきいた声で威嚇する。でも最終的には「せっかくこの場に来てるのは変わりたいと思ってるんでしょ? 自分の気持ちだけでギャンブルして借金を重ねて……もうこれ以上、家族を裏切らないで!」と心情に強くアプローチするひと言がなにより印象的だった。
叱られる側もこれが実際の夫婦だと「そういうお前も昔は……」などと、ついつい相手に言い返し、ときに論破したくなってしまうのが人の性。素直に叱られることができるのは、相手が代行業者という他人だから。これこそがサービスの醍醐味ともいえる。
本来、「叱る」ことは、相手に成長してほしいという愛情や期待があるからこそできるもの。しかし、大人になった今、私たちはよっぽどのことがない限り、他人から声を荒らげて叱られることはない。おまけに最近では、職場で上司が部下に少しでも声を荒らげると、パワハラ扱いされかねない。
怒りと叱りは違う。労力と時間、ときに相手に嫌われるかもしれない、というリスクも要するお叱りの裏には愛情がある。人間関係が希薄になる現代、身銭を切ってまで叱られることを望む人は、自分に向けられる辛辣な言葉の中に確かに存在する「愛情」や、内なる気づきを求めているのだろう、と確信した。
ほかにもある!びっくり代行サービス
●「退職」代行
「仕事を辞めたい」本人に代わって業者が退職の意思を伝えてくれるので上司と顔を合わせることはない。弁護士に依頼する場合、労働問題の交渉などもしてもらえることも
●「おはよう・おやすみコール」代行
「〇時に起こして!」といった目覚まし時計代わりから「寂しいから寝るまで話し相手になってほしい」など話し相手を代行。誰かの声を聞きたいという孤独な人におすすめ
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気分はお嬢様! 誰しも憧れる執事をレンタルできる。物腰柔らかで優しい執事が買い物に付き添って荷物を持ってくれたり、会社と家の間を送迎、悩みだって聞いてくれる
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「遠方に住むため墓参りに行けない」「コロナ禍で外出が不安」そんな声に応えてスタッフが代行。掃除をして花を手向け、最後にはきちんと手を合わせて供養を
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一緒に走ってくれる相手はもちろん、ひとりでは気持ちが折れて続かない人を元気づけてくれる「走り友」の代行。応援してくれる相手がいれば毎日続けられるかも
著書に『人間レンタル屋』(鉄人社)がある http://family-romance.com/
(取材・文/アケミン)