介護を通して自分の健康も省みるように

 前向きな気持ちで介護に取り組んできたさらださんだが、それでもときどきは感情を爆発させてしまうことがあった。

「『もういい加減にして!』と父にクッションを投げつけてしまったこともあります。すぐに謝りましたが、クッションではなく、鈍器を投げていたらどうなっていたかと背筋が凍りました。今もイライラが抑えられず母に当たってしまうことがありますが、すぐに謝るようにしていて、母も『よほどストレスがたまっていたんだね』と慰めてくれます。

 子どもや恋人とケンカした場合は修復する時間がありますが、親といられる時間は限られています。イライラしたときに愚痴を話せる仲間を持つ、困ったことはケアマネージャーに相談して、ひとりで抱え込まないことが大事です

 また介護世代の女性は更年期と重なることも多く、介護を元気に続けるには自分の体調管理も必要だ。

親の介護を通して医師と知り合い、自分の健康にも目を向けるようになりました。おかげで骨粗鬆症(こつそしょうしょう)がひどいことに気づき、治療中です。母が透析を受けているので、腎臓の値もチェックするようになり、腎臓病にならない食生活にも努めるようになりました。

 長い目でみると、親の介護が自分のためにもなっていることもあります。介護がなかったらずっと仕事と遊びで忙しく、自分の健康もほったらかしにしていたと思います。シングルで介護をされる側になったときのことも真剣に考えるようになり、両親のことで学んだ介護保険の知識が役に立つと思っています」

 最後に、シングルの人が介護ですり減らないために心がけることを教えてもらった。

「介護は人それぞれで、自分の都合と親の都合をすり合わせながらやっていくしかありません。頑張っている人と比較せず、自分でできる範囲のことをやって、できないことはケアマネージャーに相談し、解決の糸口を見つけていきましょう。お金がない場合も正直に話して、見栄をはらず、さらけ出すことで、最適な介護の方法を考えてくれます。

 親が認知症になった場合は、『恥ずかしいから』と隠さず、周囲に伝えておくと、サポートを得られやすくなります。介護の世界はどんどん進化していて、昔と今のやり方は違うので、昔の介護経験者のアドバイスを鵜呑(うの)みにしないよう気をつけましょう」

【さらださん直伝 救急搬送時の10の必携アイテム】
1. 健康保険証……もし有効期限が切れていたら早めに更新を!
2. 診察券……搬送先の病院の診察券があるとカルテにすぐアクセスできる
3. 薬手帳……かかりつけ医などで過去にどんな薬を処方されたかがわかる
4. 持参薬……今、服用している薬があれば薬袋ごと
5. 財布……クレジットカードと現金(あれば数万円程度と小銭)
6. スマホ・携帯電話……充電器も忘れずに
7. マスク……数枚(清潔を保つため、個々にチャックつきのポリ袋に入れて)
8. 眼鏡とケース……高齢者は特に老眼鏡(入れ歯をしていればケースも一緒に)
9. 靴……軽くてさっとはける靴(冬場は靴下も1足)
10. ウエットティッシュ……身体もふける大きめのもの(レジ袋に入れて用意)

【シングルの介護術 快適のポイント】
・介護によって親との関係が変わり、わだかまりが埋められることもある
・介護は親のためだけでなく、自分のためになる点を考えてみる
・ひとりで抱え込まず、介護の専門家になんでも相談する
・介護は人それぞれなので、頑張っている人と自分を比べない
・見栄をはらず、主治医やケアマネージャーなどに、お金がないことをきちんと伝える

(取材・文/紀和静)

《PROFILE》
さらだたまこ ◎放送作家、劇作家、エッセイスト。日本ペンクラブ会員。東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。テレビ・ラジオの番組企画・構成、パーソナリティーとしての活動のほか、食文化、女性のライフスタイル、生き方、恋愛論などのエッセイを多数著す。
『親も自分もすり減らない!?シングル介護術』(WAVE出版刊/さらだたまこ著) ※記事中の写真をクリックするとアマゾンの商品紹介ページにジャンプします
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