事件の背景に“父親のパワハラ”

 雪がぱらぱらと舞う、冷え込みが厳しい奈良北東部の自然豊かな集落に、徳谷容疑者が妻と3人の子どもと暮らしていた家がある。

 自宅の敷地内にある和食店で働いていた容疑者は、近隣に住む父親、母親と2人の従業員で店を切り盛りしていた。

「容疑者の祖父も父親も料理人で、30年前にここに店を構え、父親を尊敬する容疑者が店を手伝っていたんです。普段の食事以外にも宴会や冠婚葬祭のときの食事、仕出し料理、出前もしているし、地域になくてはならない店」(近所の住民)

 容疑者の妻は店では働かず、3人の子育てに専念していたようだ。

 徳谷容疑者の中学校の同級生は、とても事件を起こすような人ではないと、こう話す。

「おとなしくて、優しくて、まじめで、まあまあイケメン。地味で、女子にモテてるということはなかったけど、陸上部の短距離で、部活に燃えているという感じやった」

 別の近所の住人も、事件が信じられないと語る。

中学時代は陸上部だった徳谷容疑者(卒業アルバムより)
中学時代は陸上部だった徳谷容疑者(卒業アルバムより)
【写真】近所の人たちは「信じられない」徳谷和彦容疑者

「若いのに、町内会の集まりにも積極的に参加しとった。神社の祭りの準備のときも、おとなしいけど、気さくで素直やね。近所のお祝いの宴を彼の店でやると、“おめでとうございます。今後も頑張ってください”などと手紙を添えた花輪をくれる、心遣いができる人やよ」

 そんな好人物が悲惨な事件を起こしてしまった理由を、

「はっきり言って、父親のパワハラ」

 と容疑者の父親を名指しするのは、一家を知る関係者。

「徳谷さんの父親は、昔気質の職人肌で仕事に厳しすぎる。特に身内にはね。さらに、最近は酒を飲みながら仕事をして、徳谷さんをお客さんの前で叱ったりしていました。

 この1年はコロナ禍で宴会や葬儀や、お客さんも減っている。いい時代を知っとるから、その葛藤もあるんだろうけど」