不倫相手を問い詰めると言い訳ばかり
「壊したものは元どおりに直すのが筋でしょ! 主人があなたと知り合う前に戻すってこと!!」
咲良さんは9か月間、積もりに積もった怒りを吐き出したのですが、恵梨香さんは幹夫さんの愛情を独占したい一心で、意図的に咲良さん夫婦を壊しにかかったのは明らかです。そんな未熟で愚かな相手に「普通はこうでしょ(壊したものを直すべき)」と伝えても右から左に流れるだけ。咲良さんは原状の回復ではなく慰謝料の支払いで妥協するしかありません。
「私は主人と離婚するつもりはありません。でも、こんなことになって、うちはめちゃくちゃ! 主人と前みたいに接するのは無理……。せめて壊した責任はとるべきじゃないですか? 例えば、100万円(の慰謝料)くらいは!」
咲良さんは震える右手を左手でおさえ、こう詰め寄ったのですが、恵梨香さんは瞬時に反論。「彼はただの上司で仕事上の関係だけよ。奥さんの勘違いなんじゃないの? そこまで言うなら証拠を出してよね、証拠!」と。
咲良さんは前もってカーナビのGPS履歴、LINEのやり取りの画像、そして夫が白状したことを書面化した覚書などの証拠を準備していましたが、恵梨香さんに対して突きつけたのは興信所の調査書で、貼付されていた写真は80枚。具体的には夫と恵梨香さんが一緒に部屋に入り、一泊してから、また2人が部屋から出てくる様子です。
恵梨香さんははっきりと認めなかったものの、「肉体関係あり」という暗黙の了解のもと、咲良さんは話を進めようとしたのですが、恵梨香さんは「家庭があるなんて知らなかったのよ。まんまと彼にだまされたわ!」とさらに抵抗したのです。
しかし、夫と彼女は同じ職場です。デート中はともかく仕事中は結婚指輪をつけていました。さらに夫のスマホの待ち受けは家族の集合写真なので、恵梨香さんは当然、咲良さんの存在を知っていたはず。咲良さんの悪口、不満、愚痴をこぼす夫に対して彼女が「それなら別れちゃえば!?」と吹き込んだのではないでしょうか。
自ら離婚を勧めておきながら「結婚しているなんて気づかなかった」ととぼけるのは無理があります。「最初に誘ったのは主人かもしれない。でも私の存在を認識していたのに主人の誘いを断らなかったんでしょ? 同罪よ!」と咲良さんは彼女の嘘を切って捨てたのですが、恵梨香さんはまた別の言い訳を繰り出してきたのです。「彼はもう離婚寸前だって言っていたわ。もう夫婦として終わっているのに傷ついたから慰謝料をくれだなんて……笑わせないでよ!」
もし彼女の言うように「夫婦として終わっている」のなら話は別です。これは咲良さんと夫は別々に暮らし、ほとんど連絡をとらず、生活費を渡すだけという離婚したも同然の生活を送っている場合です。しかし、咲良さん夫婦はコロナ前は完全に同居していました。コロナ後は別々に暮らしていましたが、夫は毎月1回、自宅へ戻っています。そして夫婦の間で離婚の二文字が出たことはなく、1日に何度もLINEで会話をしており、年1、2回とはいえ性生活もあります。
恵梨香さんは夫を略奪したいから「すでに夫婦の形はない」と思い込んでいるようですが、それは妄想にすぎません。そもそも夫婦として終わっているかどうかを判断するのは彼女ではなく咲良さんです。慰謝料は精神的苦痛の対価ですが、愛情を持っていた夫に裏切られたのだから、咲良さんが動揺せずに日常生活を送るのは無理です。傷つき、苦しみ、悩むのは当然。それなのに「たいしてショックを受けてなさそうなので慰謝料を払う必要はない」と言ってのける彼女はあまりにも無神経だと言わざるをえません。