孤独な食事はNG!

「食品摂取の多様性が低下すると認知症になりやすい、という研究結果があります」

 と山口先生(以下同)。 まさに、なんでも食べる子、認知症にならない子なのだ。

「日本の研究で、食品摂取の多様性が低いグループに比べ、最も高いグループは約44%、認知症機能低下リスクが少ないという結果が出ています」

 バラエティーに富み、栄養バランスのよい食事認知症予防に適した食事だという。

65歳以上はやせている人のほうが早死になので、体形は気にせず何でも食べましょう

 中高年の肥満は生活習慣病につながるが、やせすぎはよくないのだ。また、

「現在、フレイル(要介護のリスクが高い状態)は認知症の前兆であることがわかっています。フレイルを予防することが、すなわち認知症の予防につながると考えています」

 フレイル予防の食事とはどんなもの?

「先ほどの多様性の高い食事、それから必要量のタンパク質を摂取して、フレイルの原因の1つであるサルコペニア(筋肉減弱症)にならないようにすることです。筋肉は60歳を過ぎたころから急速に減っていきます。また、筋肉をつくる力も少なくなり、70代に入るころには、20代の半分になっています」

 サルコペニアの予防は、タンパク質をしっかりとること。

「加齢とともに食が細くなってくるので、高タンパク質の食品を選ぶといいでしょう。朝昼夜、3食ともタンパク質食品を食べましょう。ヨーグルトや豆腐など、食べやすいものでかまいません。最近は、高タンパク食品や食品にタンパク質の量が表示されているものもありますよ」

 ほかの栄養素では、DHA、EPAなどオメガ3系の油、ビタミンC、E、B2、B6、B12、葉酸も認知症予防に適している。

 さらに、食に関わる環境も重要だという。

「栄養バランスにすぐれた食事でも、孤独を感じながら食べると認知症につながります」

 ここで大切なのは、孤独と孤独感の違い。

「ひとり暮らしの食事より、同居なのに家族と別にひとりで食べるほうが、孤独感が強いことがわかっています」

 孤独感を感じないためには、外食もいいという。

「行きつけの店で、マスターと話しながら食べるのもいいかもしれません。快刺激が認知症予防になることがわかっています。楽しく食べることが重要なのです。

 アルツハイマー型認知症は20年以上かけて、ゆっくりと進行する病気。これだけ長く原因を積み上げた病気は、もしかしたら薬ではそう簡単に治せないのではないかと思ってしまいます。40歳を過ぎたら、予防が何よりも大切なのです」

お酒ならワイン!
 お酒を飲むならワインがオススメ。赤ワインに含まれるレスベラトロールという抗酸化物質が話題となったが、ほかにも抗酸化物質が豊富

ふくろうクリニック等々力院長・山口潔先生
老年医学の専門医。浜松医科大学医学部卒業、東京大学医学部附属病院老年病科特任助教を経て現職。高齢者医療と認知症、MCIの予防に取り組む。