ノラ猫の不妊去勢手術活動
片耳をカットされてる猫のヒミツ
公園や街中で耳の一部がカットされたノラ猫を見たことがないだろうか。これは飼い主のいない猫が不妊去勢手術(TNR、以下同)が行われたことを示す印。
桜の花びらのようにカットされていることから通称『さくらねこ』と呼ばれている。
手術の全身麻酔中、同時に処置を行うため、出血も少なく、痛みもないという。
「猫の繁殖を防止し、猫に関する苦情や殺処分を減らすため、飼い主のいない猫を捕獲、手術し、元の場所に戻す。『さくらねこTNR』活動が全国で進められています」
そう説明するのは公益財団法人『どうぶつ基金』理事長の佐上邦久さん。同法人は飼い主不明のノラ猫と多頭飼育が崩壊した世帯の猫に対し、TNRが無料で受けられるよう活動している。
保護団体や行政はもちろん、保護活動を行う個人でも利用できる。なぜ猫にTNRが必要なのか。
猫が増えれば憎悪を向けられ、虐待のターゲットにされるリスクも上がる。住民から行政に寄せられる苦情の上位は猫がらみが占めている。
「猫から受けた被害がきっかけで嫌いになる人が多いんです。ですが、手術をすれば猫のおしっこのにおいも少なくなりますし、夜中の盛り声も減ります。子猫も生まれない。地域の問題は解決します」
穏やかに猫と接することができるようになるという。
「それに猫や子どもに危害を加えようとする人が現れても地域の人はいち早く異変に気づけます。猫の世話を通して、地域に目を配っているからです。猫への対応を改善すると地域の雰囲気が変わるんですね」
TNR活動の成果で引き取られる数が減少
その成果は具体的な数字として表れている。保健所に持ち込まれるノラ猫の数も減っているのだ。
2011年全国で8万3585件あった幼齢猫で愛護センターに引き取られた件数は3万4055件('18年度)に。約40%減少した。
「実は殺処分されている飼い主不明の猫の7割ほどが生後間もない子猫なんです」
猫の繁殖力は強く、1回に平均5匹、年に2〜3回出産するという。その子猫は生後4か月で妊娠可能となる。理論上は1年で1匹の母猫から50匹以上に増えるのだ。
だが課題も残る。
「活動が広がるのは非常にいいことですが、団体の負担は増えます。この活動は寄付で成り立っているので、サポーターも募集しています」
猫と人、共生する道は必ず存在している。