役者・佐藤二朗が原作・脚本・監督を務め、出演も果たした映画『はるヲうるひと』が、いよいよ公開される。当初は昨年5月に公開予定だったが、新型コロナウイルスの影響で1年以上も延期に。映画を自ら手がけるのは、 '08年の『memo』に続く2作目。
「僕だから、佐藤二朗だからこういう表現、みたいなものが僕の中にはまだある気がしていて。それがあるうちは脚本を書いて、監督をしたいと思っています。自分の“表現”というのを吐き出して、形にしたい。それが僕にとって、映画なんです」
本作はもともと、佐藤が主宰する演劇ユニット「ちからわざ」で '09年に舞台として上演( '14年に再演)されたもの。そして今回、山田孝之を主演に映画化された。
「この映画を作るにあたって、たくさんの人に“佐藤二朗が監督で山田孝之主演? 面白そう”って言っていただいたんですけど、“あ、コメディーじゃないの?”って(笑)。コメディーなら面白そうと。
でもそういう意見があってこそ、カウンターが打てるというか。人のやってないことをやって、ちょっと風穴を開けるイタズラ心みたいな、その気持ちはずっと持っていたいと思います」
みんな何かしら負を抱えてる
舞台はとある島の売春宿。佐藤いわく「生きる手触りがつかめず、死んだように生きる男女が、それでも生き抜こうともがく壮絶な闘いのおはなし」だ。
「みんな何らかの“負”を抱えているでしょう。その負って、第三者が取り払ってくれるわけじゃない。急に明日、消えるわけでもない。僕はその“負”を抱えた人間が、負の要因を抱えながらも、明日も生きていこうとか、5ミリでもいいから先に進もうとする話にドラマを感じる。理屈ではなく、僕がグッとくるから、今回もそういう話を書きたいと思いました」
抜け出したくても抜け出せない状況で、どう前を見るか。過去のインタビューでは、下積み時代の20代について「心がボロボロだった」と答えているが、その経験も影響している?
「暗黒の20代ね(笑)。二度と戻りたくはないです。でも、その経験が肥やしになっていたり、そのときの出会いで今も大事にしている人たちもいる。そういう意味では重要だったけど、本当にキツかった。あまり意識はしていないけど、映画で僕が表現したいことに影響しているかもしれないですね」