【90歳】途中でやめられない“延命治療”
女性の2人に1人が90歳以上生きる時代。
「90歳を越えると寝たきりリスクが格段に上がってきます。病気で入院したのをきっかけに、回復することもなく、延々と治療がほどこされるケースが多々あります」
自分で治療をやめたいと申し出ない限り、家族や医師の判断だけで、延命治療を中止することは難しい。また2007年の日本医師会資料によると、死亡前1か月間にかかった医療費を終末期医療費として捉えた場合、1人当たりの終末期医療費の平均額は112万円という報告が。実際には数か月と長引くケースが多いのです。
「生涯にかかる医療費の多くが、この終末期医療費と捉えてもいいほど。ずっと病院で、死ぬまで苦痛に耐え続けなければならない。当然、治療費もかさむ。残された家族への負担も大きくなります」
●横手'sアドバイス『80歳を過ぎたら自分の最期を考えて』
意思能力があるうちに、延命治療や看取り方について示しておきましょう。公証役場で手続きをする“尊厳死宣言公正証書”や、日本尊厳死協会に会員登録をしておくと、延命中止の効力が高いです。
認知症で起こりうるお金トラブル
認知症で財産凍結になると……
・遺言書が作れない
・不動産や株式の売買ができない
・定期預金、保険が解約できない
・介護資金が出せない
・生活費が出せない
●横手'sアドバイス『元気なうちに対策をして穏やかな晩年に』
認知症による財産凍結を回避するには、任意後見制度か家族信託がおすすめ。任意後見制度は、後見人を自分で選び、認知症になった後の生活をどうしてほしいかなど事前に契約してお願いすることができる。家族に依頼するのが一般的ですが、おひとりさまや子どものいない夫婦なら、信頼できる人に頼むことができます。さらに、財産の種類が多岐にわたるなど、相続方法が複雑な場合は合法的に円滑な財産管理ができる家族信託の利用を。いずれも認知症になってからでは利用できないので、元気なうちに検討を。
老後問題解決コンサルタント。不動産会社の日本財託に勤務し、数多くの老後問題に遭遇、解決に導いてきた。特に相続、家族信託のアドバイスに定評が。講演会やテレビ出演など多方面で活躍中。著書に『老後の年表』(かんき出版)など。
(取材・文/樫野早苗)