「寂しさ」につけ込む心理的な罠が……
さらに女性が注意したいのが『国際ロマンス詐欺』だ。
「海外在住の軍人や弁護士を装い、SNSなどを介してメッセージが送られてくる。仲よくなると彼は“日本に来たい”と言ってきてお金を騙しとられます」
だがこの手口、コロナ禍で様相が変わったという。
「在日外国人を装うケースが増えています。最終的な落とし込みは仮想通貨絡みの偽サイトへの誘導です」
ある30代女性はこの手口で騙され、1300万円超を奪われてしまった。
彼女がマッチングアプリで出会ったのは東京都在住の台湾人男性。LINEを重ね、心を許していったという。
女性はある日、男性から海外の為替取引サイトへの投資を紹介され、誘われるままにこれを始めた。男性は投資に使うビットコインの買い方から投資のルールまで丁寧に説明してくれ、女性はすっかり信頼していった。
少し儲けが出ると男性は「投資金額を増やそう」と提案、最初は1万、2万だった金額は300万、500万と膨れ上がった。
ある日、“海外から投資だと税金がかかる”などとサポートセンターから大金を払うよう、脅しのような連絡がくるようになった。悩んだ女性は男性に相談。すると彼は、今度は別の入金方法を提案、女性は投資を続けた。
貯金を使い果たし、父親に借金を頼むと「詐欺だ」と指摘されたのだが、男性を信じて疑わなかった。
後日、男性が音信不通になり、ようやく騙されていたと気がついた。
実はこの男性も詐欺グループの一員で、サポートセンターもグル。女性が投資していた為替取引サイトも実在するサイトをコピーし、精巧に作られた偽物だったのだ。
「彼女専用に作られた偽サイトでした。入金すれば反映されるし、儲けも損も管理者次第。騙されてもしかたないです」(三上さん、以下同)
この詐欺は「寂しさ」につけ込む心理的な罠が仕掛けられている。前述の女性も、「コロナ禍で出会いもないし、友達とも会えない。彼とのLINEで救われた」と明かしていたという。
「ネット上での人間関係や、やりとりは全然かまいません。ですが、お金が絡む話になったらダメ」
スマホにもオレオレ詐欺がくるかも
警視庁はスマホ詐欺ばかりではなく、以前から問題になっている『オレオレ詐欺』『預貯金詐欺』『還付金詐欺』など、固定電話を使った手口についても危惧している。
特に増えているのが医療費や税金などの還付金があるからと被害者にATMを操作させ、犯人の指定する口座に送金させる『還付金詐欺』だ。
そこで警視庁は金融機関と連携する新たな取り組みをスタートした。
「金融機関等などのATMで、携帯電話やスマホで通話をしない・させないことを社会のルール、マナーとして定着させようという『ストップ! ATMでの携帯電話』運動を推進しております」(前出・担当者、以下同)
今後はスマホにもオレオレ詐欺などの電話がかかってくる危険性もあるというのだ。
「受話器越しの相手がコロナ禍で会えない子や孫を騙っていたらどうしますか。受話器越しに聞く声を判断するのは非常に難しい」
子や孫を助けたいという気持ちを脳が勝手に記憶の中の本人と結びつけてしまう。
「もし電話に出てしまっても、話を詳しく聞く前に、一度電話を切り、自分から折り返し電話をする習慣をつけることも大切です」
電話を切ったらあらかじめ登録してある子や孫の電話番号にかけ直し、今かけてきた内容が正しいのかを確認する。もしそこで出なかったら慌てずにほかの親族や信頼できる知人に必ず相談すること。
「話の中に『お金』『キャッシュカード』というワードが出たら詐欺です。少しでも変だな、と思ったら警察に相談してください」
その際、110番だけでなく、#9110(警察相談専用電話)にかけ相談をしてもいい。
「それだけでも被害は未然に防げると思います。話を詳しく聞くとどんなにしっかりした人でも騙されてしまいます。一度、言うことを信用してしまうと、多くの場合は周囲が“詐欺だよ”と言っても聞く耳を持ちません」
高齢の親にいくら言っても聞かなかったら子や孫が110番し、警察に説得してもらったほうが確実だ。
「手口や口実は千差万別です。みんなが気をつければ自ずと減っていく犯罪です」