詐欺に遭い、男という存在が“貢いでもらう”ものから“利用するもの”に変わった久美子さん

 人生最大のイベントのひとつでもある結婚。晩婚化が進む現在、適齢期ギリギリで婚活を始める女性も数多い。そんな焦る気持ちにつけ込まれ、男に騙された女性たちの“それから”とは――。

 20代の終わりに出会った理想の王子様は、結婚詐欺師。恋愛観をもねじ曲げられた、彼との再会は25年後――。

“男に貢がせたい女”でいたい

「大学進学のために18歳で上京したときの東京は、バブルでしかも女子大生がちやほやされていました。その真っただ中にいた私は、女子大生という立場を生かし銀座のクラブでバイトをして、男性から貢いでもらっていたんです

 こう自身の人生を振り返るのは、久美子さん(仮名・52歳)。艶のあるロングヘアで一見するとセレブ妻という風情が漂う。だが若いころに結婚詐欺に遭うという苦い過去を持っている。当時、頭の中はいつも「男に貢がせたい女」だった。

「バイト先でせっせと客のおじさまたちに媚びて。バッグやジュエリーを買ってもらったこともあります。ゴルフも教えてもらいました」

 だがあるときに、きれいな女子大生は入店してからすぐにいなくなることが多いことに気づく。「美人は得ですよ。愛人になっていたんでしょう」と呟く。

 そんな愛人に“なれなかった”久美子さんは、イベントバイトで知り合った広告代理店勤務の男性や、飲食店のオーナーなど、金持ちに見える男性と付き合うようになる。付き合った理由は、

「ちやほやされて、ブランド物を買ってくれて、美味しい食事や居心地のいいバカンスに連れて行ってもらえるから」

 そんな彼女の“運命の出会い”は27歳のときだった。

「大学を卒業してから、健康機器の販売会社に入社しました。17時に終わり、残業がないのでクラブのバイトはそのまま続けました」

 25歳を越えたとき、学生時代から働いていた店を辞め、違う店に移っていた。以前の店で求められる年齢ではなくなっていたからだ。移った店は、規模は以前より小さいがママがやり手だったため、さまざまな職業の男性が店の常連だった。

「ある夜、常連さんが海外投資家の40代の男性を連れてきたんです。紳士的で礼儀正しくて、清潔感があって。初対面で惹かれました」

 2度、3度と常連さんと一緒に来店し、同席するようになるとデートに誘われた。夜景がきれいな港区のレストランで食事をしたり、ゴルフにも一緒に出かけた。

「交際を申し込まれるかなと期待していたら、連絡がぷっつり切れてしまったんです」

 常連客に尋ねると「急用で海外に戻った」という返事。デートの誘いは店のママを経由していたので、互いの連絡先を知らないままだった。もどかしい気持ちが残ったが、「もっといい男を探そう」と気持ちを切り替えて貪欲に資産家を探し続けた。だが、なかなか理想の男は現れなかった。しかし──。