結婚も近いと有頂天になっていた

 最初のランチはお台場のイタリアンレストラン。テラス席の、ゆったりしたソファに座って、ランチシャンパンで乾杯し、ピザやパスタをシェアした。彼は美帆さんに仕事のことをいろいろと尋ねてきた。

リーマンショック以来、アパレル業界は将来が危ぶまれていると、つい口にしたんです。すると彼が“不動産を持ってみませんか”とすすめてきて。そのときは“機会があれば”と話を止めました

 2度目のデートは夜景がきれいなレストラン。彼は、若い世代が将来の不安を払拭できるよう、不動産で財産を築いてもらうことが自分の夢だと打ち明けてきた。

彼の弟が20代で起業した会社が倒産し、自己破産したそうです。不動産を持っていれば、破産しない可能性もあったのにと、とても残念そうでした。だから若い世代のために売りたいと。熱くアグレッシブな語り口に、好意を持ち始めていたんです

 3度目のデートは房総までドライブ。車中で口説かれて、その夜はホテルへ。「また会いたい」と別れ際にキスされるが、「結婚を前提に付き合ってほしい」という言葉はなかった。

「そのころには、私のほうが彼にぞっこんになっていました。だからプロポーズを急かすのもよくないかなと。彼を失ってしまうのが怖いというか、妙に臆病になっていたんですね」

 婚活中の女性は「プロポーズ待ち」になると、常に心が揺れるものだ。美帆さんも例外ではなかった。その心情はやがて「彼に好かれたい」という思いを駆り立てる。そんなときに、彼から不動産をすすめられたという。

「都内近郊で、JRの最寄り駅から徒歩10分ぐらいの、700万円のワンルームマンションを掘り出し物だと告げられて。賃貸にすれば利益にもなるとすすめられました。貯金と親から少し援助してもらい購入したときは、結婚も近いと有頂天になっていました」

 ところが1年たっても一向に結婚話が出てこない。クリスマスイブも正月も、仕事を理由にデートを断られる。彼からのLINEの返信が速いので、「誠意はある」と美帆さんは自分に言い聞かせていたが……。

自分は本気で結婚を考えていたのに、相手は初めから遊びだった……。美帆さんの受けた心の傷は深く、大きい
自分は本気で結婚を考えていたのに、相手は初めから遊びだった……。美帆さんの受けた心の傷は深く、大きい
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年末年始に会えない日が続き、こらえきれず“あなたの両親に会いたい”と頼んだんです

 すると実家暮らしだという彼は、

「正月中に父が脳卒中で倒れて……。幸いにも一命をとりとめて退院したんだけど、今リハビリ中なんだ。母親は父の病気のせいで心労がたたって、具合が悪いんだよ」

 と美帆さんに説明し、会わせられないことを謝った。

そのあたりから、おかしいと不信感を抱くようになって。そこでデートの後、こっそり彼の後をつけたんです

 すると彼が中規模マンションに入っていくのを目撃した。彼が乗ったエレベーターは5階で停止。追いかけるように美帆さんも5階に上がり、部屋を突き止めようとすると、ある一室からゴミ袋を持った彼が出てきた。美帆さんは非常階段に隠れると、彼はエレベーターで下っていく。彼が出てきた一室を確認してから、美帆さんが非常階段から階下に下りて、彼の姿がないことを確認してから帰宅したという。