肺を若返らせるには?
「残気の量を減らす手っ取り早い方法は深呼吸。でも24時間、深呼吸を行うことは不可能だし、すべての残気が深呼吸で外に出ていくわけでもありません」
そこで考案したのが、トントンと肺を叩く方法。胸を叩いて、その振動で肺の中の残気を外に出す。老人肺にも有効なこの方法は、看護師時代の経験から編み出した。
「タッピングといって、痰が出やすくなるように胸を叩く療法があります。手のひらをお椀の形に丸めて、1秒に2回ほどの速度でリズミカルに叩く。そうすると気管支が振動し、痰が出やすくなる」
トントンと胸を叩くことで、不安や緊張を取り除く効果もある。呼吸器科の患者さんがよくタッピングされていたのが、ヒントとなった。
「小児病棟にいたときには、喘息の子どもの胸をトントン叩く親もいた。これは、誰でもできる手軽な健康法。寝たきりの方がやってもいい。重症の病気でも、手術後でも、どんな人でも運動が必要というのが医学的事実ですから」
身体の一部を動かすだけでも血流改善効果が見られ、気持ちよく運動すれば、脳にエンドルフィンという鎮痛物質が分泌される。
「私は、79歳のときに乳がんで片乳切除の手術を受け、その翌日から階段昇降の運動を始めました。そのおかげで、早期退院となりました」
新鮮な空気を肺に与えることは、健康の“基本中の基本”なのだ。
「新鮮な空気が肺、そして身体全体に何よりも重要。近代看護学の母、ナイチンゲールが著書に記しているとおり、看護師が細心の注意をすべき最初にして最後のことは、“患者が呼吸する空気を、患者の身体を冷やすことなく、まわりの空気と同じ正常さに保つこと”なのです」
年をとった肺は、新鮮な空気を取り込む力が弱る。でも、トントン肺を叩くだけで肺の老化を食い止め、現在の息苦しさも改善できる。
「今の自分を癒し、未来の自分に健康を準備する健康法。そんなふうに考えて、胸をトントンしてください」
やってみよう“肺をトントン”
(1)鼻から息を吸う
(2)右手のひらを軽くお椀のようにして、左胸の肋骨のあたりをリズミカルに叩く。40回程度 ※1秒に2回が目安。息を吐きながら、手を上下に往復させ、位置を変えていく。その後(1)に戻り、(3)に続く
(3)(2)と同様に、右胸の肋骨のあたりを左手で叩く
(4)胸の中央の気管支のあたりも同様に叩く ※左右のどちらから行ってもOK!
★あおむけで寝転んだ体勢ならば、よりリラックスできて効果的。
◇これは守って!◇
基本的に他人がやらないように。力加減がわかる自分自身で行うこと。高熱、高血圧など身体に異常がある場合には行わない。
もっと詳しく知りたい人は『肺炎を遠ざけ長生きする トントン肺たたき健康法』(著者=小池妙子、サンマーク出版)をチェック!
(取材・文/ガンガーラ田津美)