行政書士・ファイナンシャルプランナーをしながら男女問題研究家としてトラブル相談を受けている露木幸彦さん。今回は、コロナ感染対策とワクチンをめぐる夫の態度に離婚を決意した妻の事例を紹介します。

 

 昨年から続く、長く苦しい新型コロナウイルスとの戦い。東京都では4回目の緊急事態宣言が発令中にもかかわらず、7月23日、オリンピックの開会式が予定通り行われたことに対して賛否両論が巻き起こったばかり。オリンピック開催中の現在も変異株の流行はおさまりそうにありません。

 平和の祭典を横目に、私たちは相変わらずです。外出自粛により会社への出勤だけでなく、飲み会への参加や旅行への出発という喜楽を奪われ、怒り、哀しみに耐える日々が続いています。そんななか、生活における不満や不安、イラだちが原因で離婚の危機に発展する「コロナ離婚」の相談が発生しています。筆者は行政書士・ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、感染者数と相談者数は比例しているようで、第5波がやってきた7月下旬はまた「コロナ離婚」の相談が増加しています。

 ところで、我慢続きの生活に終わりが見えてきました。なぜなら、すべての国民にワクチンを行き渡らせる体制が整いつつあるからです。例えば、4月から65歳以上の高齢者や基礎疾患がある人への接種が始まり、さらに6月から職域接種へ拡大しました。

 ワクチンの存在はコロナで傷ついた夫婦の関係を修復する効果がある。筆者はそう信じて疑いませんでした。しかし、蓋を開けてみると、ワクチンをめぐる夫婦喧嘩が発生し、それがコロナ離婚につながるという現実が待っていました。死亡率が高い高齢者にとって待ちに待ったワクチンなのに、接種したくない人もいる……それは筆者にとって誤算でした。

 ワクチンを打つか打たないか。そのことをめぐって口論になり、夫との離婚を考えているのは今回の相談者・陽子さん。「ワクチンのことで夫と喧嘩になってしまって……」と唇を噛みます。一体、何があったのでしょうか?

結婚30年目、夫の酒癖の悪さに悩む妻

<登場人物(年齢などは相談時点、名前はすべて仮名)>
夫:茂(67歳・アルバイト)
妻:陽子(65歳・専業主婦)☆今回の相談者
長男:孝弘(26歳・茂と陽子の子・会社員)
孫:蓮(2歳)

「主人は結婚してから、ずっとあの調子なんです」

 と陽子さんはため息をこぼしますが、夫の茂さんとは今年で結婚30年目。今まで数々の酸いも甘いもともにした2人の仲はすでに枯れ果てており、食事中はほとんど無言で、一緒に出かけることは稀有。孫のことしか共通の話題はなく、1つ屋根の下で暮しているから「夫婦」というだけで、すでに愛も情も尽き果てたシルバー世代の典型です。

 現役時、自動車ディーラーで整備士として活躍した夫は一昨年、退職し、厚生年金を受給するまでは同じ整備工場で週3日出勤のアルバイトとして働いています。夫の両親を5年前に看取りおえ、自宅の住宅ローンは退職金で完済し、そして息子夫婦の間に産まれた孫を可愛がる……そんな悠々自適な老後生活を送っていた矢先、襲ってきたのが新型コロナウイルスの蔓延でした。悩みの種は夫の存在。

「一番の悩みは主人の酒癖の悪さです!」

 陽子さんは声を大にして言います。例えば、すでに午前零時を回っているのにベロベロの状態で帰宅。陽子さんが「何時だと思っているの!」と苦言を呈すると夫は逆ギレ。深夜の時間帯に「誰のおかげで飯を食えているんだ!」と大声を出したり、リビングテーブルをひっくり返したり、挙句の果てには陽子さんの胸ぐらをつかむ始末。