橋田さんの作品に傷をつけてはいけない
「橋田さんはラストシーンをどうしたらいいかと考えていましたね。メモには、五月(泉ピン子)が話があると言って“自分はひとりぼっちだと思ったこともあったけど、みんなが1人にしてくれていたんだ。ありがとう”というセリフが書かれていました」
極秘ともいえる貴重なメモ書きを基にすれば、新作を作れそうな気もするが、石井さんは終了を決めた。その背景には、こんな思いがあった。
「終わらせてしまうのは申し訳ない気持ちでいっぱいでした。でも変に続けて、橋田さんが築き上げた作品に傷をつけてもいけない。だから入院されたあと、TBSの担当者とも話をして“万が一のことがあったら『渡鬼』はやめよう”と伝えていました」
最後の放送となった'19年のスペシャル版のラストシーンでは、「来年も明るく会えたらと、ただ願っているきょうだいでした」というセリフで締めくくられていたが─。
「作品に自分のメッセージを入れる方なので、橋田さんの素直な気持ちだったんでしょうね。私が東京生まれで、橋田さんは大阪出身。性格がまったく違うからこそ言いたいことが言える仲だったし、ここまで一緒に続けてこられたのだと思います」
多くの人に愛された橋田さんの周りには、鬼ではなく素敵な仲間たちの姿があった。